第324話 魔女になるべくして生まれた子供達
『いやあ、お熱いですなあ』
「キラリちゃん」
『二人ともお疲れー』
そう言えば新年会の最中、姿が見えないと思ったら。
私とソロアちゃんがキッチンで洗い物をやっていると、星妖精のキラリちゃんがパタパタと羽ばたいてやって来た。
「何処に行ってたの?」
『アイリーンの使い魔のハーランドと星を見ながら、飲んだり食べたりして、お喋りしてたの』
「ハーランド……(※)。
マンチェスターシティの……じゃなくて、カメレオンの方か。
……そう言えば、キラリちゃんとは仲良しだったわね」
※ノルウェー代表のサッカー選手
なるほど、今日の我が家には魔女がいっぱい来てるんだし、その魔女達に従う使い魔もたくさん来てるんだった。
キラリちゃんは特にその中でも、魔女アイリーンの使い魔、カメレオンのハーランドと仲良しさんなのだった。
「キラリちゃんも隅に置けないわねえ」
『ぐへへ♪』
あら……でも確か、魔女アンネマリーの使い魔の猫妖精のシュレディンガーとも最近は仲が良かったような……?
『シュレディンガーはライアのお相手で忙しそうだったから、今夜の相手はハーランドにしといたの』
「なるほどなー」
うーん、意外と恋多き女なのね、キラリちゃん!
『洗い物が一区切りついたら言って。
コーヒー淹れとくから』
「ありがと、キラリちゃん」
「き、キラリさんの淹れてくれるコーヒーとかココア、美味しくて私、す、好きです……」
『私もディケーと一緒に住み始めて結構経つし……ま、多少はね?』
ニカッと笑って、ソロアちゃんに胸を張るキラリちゃん。
いやあ、初めて我が家にキラリちゃんが来た時は、衰弱しきってて儚い存在に思えたものだけど……。
『あ、あれ? ……力が……あぅ』
『あ、キラリちゃん!
……まだ体力も魔力も戻ってないんだし、無理しちゃダメよ』
『……ありがとう、ディケー』
ーーーあの頃に比べたら、すっかりたくましくなっちゃって、まあ。
使い魔は主の魔女に性格が似て来る……なんて聞くし、もしかしてキラリちゃんがエキセントリックな性格になっちゃったのって……えっ、私のせいだったりする?
「他のみんなはまだリビングでお喋り?」
『ライアとユティとクロアが大人気すぎんよー。
今年は少し新年会を開くのが遅かった分、可愛がるのが待ちきれなかった……って感じ」
いやはや、ウチの子達、好かれ過ぎでは?
魔女って万人に愛されるような特性が生まれつき備わってるみたいだけど……でも思えば、ライアとユティは五年前からもう"魔女の瞳"で知らず知らずの内に周囲の人達を魅了してたわね。
初めて"魔女の夜"に参加した時も、魔女の先輩達は二人の可愛さに即心を奪われて、お菓子をくれたり、お古の魔道具を譲ってくれたりもしたし……。
「(魔女になるべくして生まれた子供達……ってコト?)」
……だけど、そうなると気になるのはライアとユティ、それぞれの本当の両親だ。
レジェグラの設定資料集には二人の親に関しての言及は特に無かったし、私がディケーに憑依転生したのも二人がディケーの養子になって約五ヶ月くらいが過ぎた頃だったから……。
そもそも、ディケーがどうやって荒廃した公国領まで出向いて、ライアとユティと出会ったのかが、定かではないのよね。
「(その辺の謎もその内、解き明かされる日が来るの……?)」
最初はレジェグラの推しキャラの親をやれるなんて、異世界すごいすごい! ……って感じだったけど。
いざ、こうして母親になって何年も一緒に過ごしてみると……ゲーム本編の時間軸の二人と、今の二人を同一の存在として見るコトが出来なくなってしまったような気がする。
……あれだけアクスタやらアクキーやらタペストリーやら集めた、敵キャラだけど大好きなキャラ達だったのに、どうして?
「(もう、ゲーム本編の二人とはかけ離れた存在になりつつある……ってコトなのかしら?)」
洗い物を終えてテーブルに着くソロアちゃんにコーヒーを振る舞うキラリちゃんを視界に捉えながら。
ーーー私はふと、そんなコトを思うのだった。




