第119話 妖精さんの居る朝食
「キラリちゃん、昨夜はよく眠れたかしら?」
『ええ。久しぶりにぐっすり眠れた』
「そう、良かった。何よりだわ」
翌朝。
昨夜は闇オークションへのガサ入れを決行、その後ヴィーナに戻ってギルマスとキラリちゃんの処遇について話し合ったりしたとあって、私はちょっと遅めの起床だった。
先に起きていた子供達があらかた朝食の準備を済ませてくれていたおかげで助かっちゃったわ。
……あと久々に月と星の光を浴びたせいか、何処と無くキラリちゃんもツヤっとしてる感じがするわね!
「キラリちゃん、ご飯美味しい?」
『うん。こんなに美味しい食事、いつぶりか分からない』
「お母様の料理は美味いからな。
特に、半年くらい前から更に美味くなった気がする」
「(あらら……それ私がディケーに転生しちゃった頃だわ)」
そんなこんなで。
星妖精のキラリちゃんを囲んでの朝食。
人間が食べる物も問題なく食べられるとの事だったので、キラリちゃんも子供達と大差ないメニューで食事を摂っていた……さすがに量は妖精さんに見合った物にしてるけども。
「まだ体力も魔力も万全じゃないし、昼間は子供達と家に居て貰える?
私はヴィーナの冒険者ギルドでギルマスに色々と報告したり聞いたりしておかないといけない事があって」
『いいよ。
ライアとユティと一緒に待ってるね』
「お願いね。
ライアとユティもキラリちゃんの事、頼んだわよ」
「「りょうかーい!!」」
うん、元気があってよろしい!
いや、子供達の元気をキラリちゃんに分けてあげたいくらいですよホント……仲間とも離れ離れになった挙げ句、人間に捕まって愛玩動物としてオークションに出されちゃうだなんて……。
今でこそキラリちゃんは私や子供達と普通に会話してるけど、それは私達が魔女や"魔女見習い"だから妖精の言葉が分かるだけであって、普通の人間にはキラリちゃんの言葉は聞こえないのよね。
だから助けを呼ぼうにも誰にも届かなくて、もう半分諦めかけてたみたい……。
『大丈夫!?
魔術ですぐにロックを解除するから、檻が空いたら私のコートに飛び込んで!』
『!? 妖精の言葉を喋ってる……貴女、何なの?』
『おいおい説明するから! 今は私を信じて!!』
『……分かった!』
……と、こんな感じのやり取りが真っ暗になった闇オークションの大テントの中でありましてえ。
私もライア程じゃないけど、ディケーに憑依転生しちゃってから半年経ってるし、ある程度は動物やら人外の存在の言葉が分かる……と言うか、自分の意思とは関係なく理解出来るようになりましてね……これも魔女に備わった特性みたいなモノなのかしら? 某ジブリの宅急便の映画でも、主人公の女の子が黒猫と話してたもんね。
「キラリちゃん。
ご飯食べ終わったら、お庭で遊ぼうよ」
「おい、ライア。
キラリちゃんはまだ調子が戻ってないんだから、まずはゆっくり養生させてやらないと」
「あ、そっか」
「それこそ、ライアの治療魔術でキラリちゃんを治してやれないのか?」
「うーん。
私の治療魔術、怪我とかは治せるけど体力の回復とかに関しては、あんまり自信がない……」
『いいの、月と星の光を浴びて時間をかけて治すから。
ライアもユティもありがとう』
子供達もキラリちゃんと打ち解けたみたいね。
そう、ライアの言う通り、キラリちゃんは星妖精だから、やっぱり月明かりや星明かりを浴びないと、ちゃんとした回復が出来ないみたいなのね。
それこそ、
『ナ……ッ!?
貴様、何故マダ動ケル……ッ!?
魔力切レデ、動ケナクナッテイタハズ……!!!
貴様……貴様ハ、一体……!?』
『ああ、言ってなかったわね。
ーーー私は"星空の魔女"。
星空の魔女、ディケー。
……夜は私の時間よ。
星が宇宙に輝き続ける限り、
私もまた不滅……そういう運命なの』
南の樹海で炎魔将アグバログと戦った時、ディケーが言い放ったように。
魔女や妖精は星と繋がりが深い存在だから……特にディケーは"星空の魔女"の通り名を冠しているだけに、余計にね。
あの戦い、夜になって星が出ていなかったら、正直かなりヤバかったし……まあ最後はディケーがきっちりと決めてくれたんだけども……。
「エリクシルジュースを作っておくから、2人ともお昼の自主鍛練が終わったらキラリちゃんにも少し飲ませてあげてみて。
妖精にも効果があるかどうか、気になるから」
「分かった、母様」
「お任せください」
まだ人間ではあるけど"魔女見習い"に効果があるなら、妖精のキラリちゃんにも効くんじゃないかな、とは思うんだけど……うーん。
昨夜初めて会ったばかりだし、長逗留になるなら話して貰える範囲で色々とキラリちゃんに聞いておいて、対策を考えていきたいところね。
「キラリちゃん、キラキラしててホントに綺麗だねー」
「星妖精って、皆キラリちゃんみたいな感じなのか?」
『個人差はあるけど、大体こうよ。
皆キラキラしてるから、夜に明かりが要らないくらいなの』
「「なるほどー」」
それに、
「(キラリちゃんって名前も、結構気に入って貰えたみたいだし)」
妖精は本当の名前を身内以外に知られてしまうと存在が急激に弱体化して、最悪、消滅しちゃうらしいのね。
イギリスの昔話で、大聖堂を建てるお金を工面する代わりに王様の心臓を要求した妖精のアウルフェザーが名前を言い当てられたせいで、大聖堂の完成直前に屋根から真っ逆さまに落ちて砕けて消えたり……。
日本の昔話にも、川に橋を掛ける見返りに大工に目玉を要求した鬼が「鬼六」って名前を言い当てられて、悔しそうに川の中に沈んで行った「大工と鬼六」があるし……このレジェグラの世界も御多分に漏れず、人外の存在は本当の名前を知られたり、正体を見破られる事がすごく苦手みたい。
「(だからまあ、とっさに付けてあげたのが『キラリちゃん』なのでした!)」
私も魔女としての正体を隠しながら冒険者とかやってるし、ちょっとキラリちゃんにシンパシーを感じちゃいましてね……。
更に言及すると、私がディケーに憑依してる事も皆にずっと隠してるし……。
誰も知らない、知られちゃいけない、ディケーさんが誰なのかーーー状態なのが、今の私な訳でして……。
「キラリちゃん。お互い頑張りましょう」
『?』
さーて、お腹も膨れたわね。
お昼はギルマスに会いにヴィーナに行かなきゃだわ。
あ、あと結局使わなかったオークションの落札用のお金をナタリア様に返却しなきゃだった!




