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公爵閣下、貴方に忠誠を誓います〜ですがややこしくなるので寵愛は不要です~  作者: 夢屋
第二章

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幸せを抱き締める

ホワイトデー企画ですのでお気軽にお読みください。

「どうしたロゼ、体調でも悪いのか?」


「い、いえ! そんな事ありません! このイチゴがたくさん入ってるケーキ、ほっぺたが落ちそうなぐらいに美味しいです!!」


「そうか」


 そう言ってロゼは生クリームがたっぷりついたスポンジと半分にカットされた艷やかなイチゴとを一緒にフォークで刺して口に運んだ。

 そして『美味しいです!』といって笑った。

 だがその笑顔も長続きせず、徐々に物憂げな表情へと変わる。

 

 今日は久々に午後から休みが取れたので、先日チョコを頂いたお返しをしようとロゼを俺の自室に呼んだ。

 そこで準備しておいたケーキを食べてもらおうと思っていたのだが、肝心なロゼは部屋に入ってきた時から既に表情が冴えなかった。

 

 以前ロゼが『恋人の俺を大事にしたい』と言ってくれたこともあり、いつもの制服ではなく令嬢姿がみたいと頼んだのがまずかっただろうか。


 確かに彼女は制服姿でも、着崩す事もせず常に身綺麗にしているので凛としていて美しい。

 だが社交界にまだ出たことのない令嬢としての彼女を見れるのは俺の特権でもある。

 ゆっくり時間が取れた今、その姿を独占したいと欲を出したのが彼女の心を重くさせたのかもしれない。

 

「ロゼ、無理して今食べることはない。 明日の任務終わりにでも食べるといい」


「でも、折角閣下が準備して下さったのに……」


「誰にでも不調な時はある。 また別の機会に一緒に食べよう。 次は制服を着て、もっと気楽にな」


「違うんです、その、ドレスが緊張するとかではなくて……」


「今日は俺のワガママを聞いてくれてありがとう」


 俺を気遣うロゼがいじらしくて、ロゼに手を伸ばし頭をそっと撫でた。

 するとロゼは翡翠の様な瞳を潤ませそのまま俯いてしまった。

 俺も少々浮かれ過ぎだったようだ。


「こちらが礼をする立場なのだから、ロゼのしたいようにさせるのが筋だった。 気を遣わせて本当に済まない」


 するとロゼが一瞬ピクリと身体を震わせた。

 そして恐る恐る顔を上げた。


「その、私がしたい様に……させてもらってもいいんですか?」


「え? あ、あぁ。 勿論だ」

 

 ドレス姿という事もあって、瞳を潤ませて俺を見上げるロゼが艶めかしくて心臓が大きく脈を打つ。

 そんな顔をして何をねだろうというのか。

 暫く間をあけて、ロゼがようやく重い口を開いた。


「では、ギュってしてもらっても、いいですか?」


「……抱き締めて欲しいと、いうことか?」


 思わず聞き返すとロゼはまた俯いて小さく頷いた。

 まずい、口元がだらしなく緩んでしまう。

 俺は必死に冷静さを保ちながら椅子を引き、『おいで』と手を広げた。

 するとロゼはパァッと目を輝かせて俺に抱きついた。

 体勢的に俺がロゼの鎖骨辺りに顔を埋める形になっているのだが、当の本人は然程気にしておらずそのままギュッと俺の頭を抱き込んだ。

 

「何かあったのか?」


「ちょっと凹んでまして……。 でも閣下に抱き締めてもらったら元気出ました」


「そうか」


 余りにも可愛い事を言うので堪らなくなり、俺は彼女の膝の裏に手を滑らせそのまま横抱きにして膝の上に乗せた。


「閣下! 何するんですか?!」


「この方がより強く抱き締めてやれる」


 膝の上でリンゴの様な顔であたふたするロゼを包む様に抱き締めた。

 ロゼは暫く身体を強張らせていたが、次第に緊張も解けて肩口に顔を擦り寄せた。


「すみません。 すっごく嬉しいです」


 そしてふにゃりと頬を緩めて笑った。

 マズイな、このままだと理性が焼き切れそうだ。


 俺は一度ルカスと打ち合いをしていた頃の自分を思い出し、平静を保つ事にした。


「君がこんなに甘えるなんて余程の事があったんだな」


「……今日アルフレッド様に叱られたんです」


「それで食が進まなかったのか? 何があった」


「実はアルフレッド様のレイピアを折ってしまったんです」


「……レイピアを折った? 」


「はい。 アルフレッド様の指導が余りにもキツくて、避けようとしたらつい肩に力が入っちゃったんです」


「まさか長剣で叩き折ったのか?」


「わざとじゃないです、不可抗力ですよ! それで『この馬鹿力が!』って言われてしまって……」


 いや、それはアルフレッドが悪いだろう。

 しかし後を追って令嬢らしからぬ言動に思わず笑いが込み上げてくる。


「……まぁ剣にも相性がある。 それに作り直すとなったらフェリスと話す口実にもなるだろう。 あまり気落ちするな」


「……そう言って笑ってますよね」


「ドレスを着ていてもやはりロゼだなと思っただけだ」


「呆れてます?」


「いや、そこが堪らなく愛おしいよ」


 誰も代わることが出来ない唯一無二の存在。

 華奢な身体で甘えベタ、やたら強いのに俺のお願いにはすこぶる弱い。

 俺だけが知っている彼女の魅力だ。


 俺は彼女を抱く腕に力を込め、その幸せの余韻に暫く浸るのだった。

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