表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵閣下、貴方に忠誠を誓います〜ですがややこしくなるので寵愛は不要です~  作者: 夢屋
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/63

ようやく掴んだ真実

「お怪我はありませんか?」



 抱えてるレティーナ様に声をかけると、何度も首を縦に振って答えてくれた。

 まだ敷地内とは言え、こんな茂みの奥まで連れてこられて怖かったに違いない。

 身体を震わせしゃくり上げる姿が痛々しかった。

 私はレティーナ様を誘拐しようとした二人の男を睨めつけた。



「ご、ごめんなさい!! 何でも喋るから殺さないでぇ!!」



 すると気絶している男の隣で、もう一人の男が命乞いを始めた。

 そしてドスンと尻もちをついた弾みでズルっとカツラが落ちた。

 


「あ、ジェズアルド様とオールナードにいた……!」


「リード・カルタス……」


「レティーナ様のお知り合いですか?」


「……キアノス様からさっき聞いたの。 お兄様と手を組んでるかもって。 まさか本当だったなんて……」



 じゃあ使用人に変装してたのも何かしらの計画の内か。

 なら見逃す訳にはいかない。

 私はレティーナ様を降ろし、パキパキと両手を鳴らしてリードという男に近づいていく。



「白状してくれるのは大歓迎だが、関係ないレティーナ様を危険に晒した罪は重い」


「ヒッ!!」


「先ずは牢屋で反省してこい!!」



 私はグッと腕を引き、顔面目掛けて拳を突き出した。



「ギャア――ッ!!」



 まるで断末魔の様な叫びが茂みの中を響き渡る。

 いやいや殺すつもりなんてないし、ちゃんと既の所で止めるけど?

 それでも充分効いたらしく、リードという男は泡を吹いて気を失った。

 これでもう悪いことは出来ないだろう。

 ふぅ、と一息ついた時だ。



「そこまでだ!!」



 男の怒号に振り返ると、ジェズアルド様がレティーナ様の首に腕を回して立っていた。

 


「まさかメイドがでてくるとは想定外だな。 何者だ?」



 ジェズアルド様は腰から下げていた剣を抜き、レティーナ様の頬に寄せた。

 迂闊に動けばレティーナ様を傷つけてしまう。 

 私は大人しくヘアキャップと眼鏡を外しエプロンのポケットにしまった。

 パサリと落ちた赤髪を掻き上げて顔を見せると、ジェズアルド様は瞳を大きくしてわなわなと震えだした。


 

「いばら姫……?! こんな所に隠れていたのか!」


「貴方を捕まえる為ですよ。 で、何故レティーナ様を誘拐する必要があるんです?」


「……無実の罪を擦り付けられたのに随分と仲良さそうじゃないか。 その様子だと君達を逃がしたのはやはりレティーナだろ。 こいつの所為で計画が狂ってしまったんだ。 その責任をとってもらう」


 

 更に締め上げられたレティーナ様の目に涙が浮かぶ。



「お兄様は……叔父様を慕っていたんじゃなかったの……?」


「叔父上の技術は素晴らしいが古臭い。 だから私が代わりに製造し取引してやるのさ。 なに、ルドアンに行けば可能だ。 魔晶石もあるから問題もない」


「そんなの、叔父様が居なきゃ出来っこないわ!」


「黙れ!」


「キャッ!!」


「安心しろ。 叔父上には開発者として私の元で働いてもらうさ。 そもそも誰かの下に就くなど私の性に合わない。 さっさと父を引退させても魔道具が完成すればハーメルス家は安泰だ。 良いこと尽くめだろ?」 



 投げ飛ばされたレティーナ様に駆け寄ろうにも、ジェズアルド様の剣先はまだレティーナ様の首元に向いている。

 使いは送ったから閣下達も到着する筈なのに人の気配がしない。

 どう動くべきだ?

 すると何か察したのか、ジェズアルド様は鼻を鳴らした。



「助けなら当分来ないぞ、いばら姫。 誰も近づけないよう認識阻害用の魔道具を置いてある。 騎士団が到着する前に君も始末してやろう」



 護衛のチェスもいないのにどうやって?

 私が身構えるとジェズアルド様はニタァッと口を弓形に歪め、もう片方の手の甲を見せた。

 よく見ると、その手の指全てに緑色の石がついた指輪が嵌めてある。


 

「剣も魔力もないセロなど虫ケラ同然!! 私から逃げた事を後悔しろ!!」



 そう言ってジェズアルド様が地面に手をつくと、嵌めていた指輪が一斉に光り始めた。

 

 ――ゴゴゴゴ……。


 足元で轟く地響きと共に地面が裂け、ボコボコと隆起していく。

 そして盛り上がってきた土砂が徐々に形を成して、二メートルを有に超えた巨大なゴーレムへと姿を変えた。

 無機質な物からこんな巨大な傀儡を作り出せる魔力、騎士でもないジェズアルド様が持ってる筈がないのに。


 そうか、あの指輪の石全てが魔晶石なら可能だ!

 

 

魔晶石(コレ)さえあれば私は無敵だ!! さぁ、いばら姫を叩き潰せっ!!」


 

 ジェズアルド様の声に反応して、ゴーレムは巨大な土の拳を私に向かって豪快に振り下ろす。

 急いで横へ飛び退くと、拳はドゴン!!と地面を砕き、元いた所が大きく陥没した。

 そして直ぐ様もう片方の腕を振り回す。

 避けたものの、ブゥン!と風圧に身体を煽られる。

 私は急いでゴーレムから距離を取った。

 

 魔晶石の恩恵か、凄まじい攻撃力と俊敏さ。

 こんなの武器無しで戦える相手じゃない。

 

『剣も魔力もないセロなど虫ケラ同然』


 私はジェズアルド様の言葉に歯噛みしながら左耳に触れた。

 火、水、雷、幾ら想像しても出てこない!

 どうすれば使えるんだ!


 するとゴーレムの視線がゆっくりと私から横へ反れた。



「「ヒィッ!!」」



 視界の端で、目を覚ました誘拐犯二人の姿を捉えた。

 私はゴーレムが二人を薙ぎ払う前に、急いで二人の服を掴んで投げるように茂みの奥へと追いやった。



「死にたくなければ自首してこい!!」


 

 そう二人を焚き付け、この場から逃がした。

 すると二人を見失ったゴーレムが今度は私を(ほふ)ろうと拳を高く高く振り上げた。

 もうダメ元だ。

 私は祈る思いで左耳のピアスを外しグッと握り締める。

 そして頭上から落ちてくる大きな影にギュッと目を閉じた。



――(ちから)が欲しい!!



 次の瞬間、ズシリと重たい何かを掴んでいた事に気づき、無意識にそれを両手で持ち構えた。

 

 ――ガギィン!!


 鈍い衝突音に目を開くと、眩い銀色が目に飛び込んできた。

 

 目を疑った。


 いつの間にか私は長剣を握り、ゴーレムの攻撃を止めていたのだ。

 

 転移? それとも創造物?

 ……いや、今はどっちでもいい。 

 視界を遮る様な大太刀、そして上腕にずしりと伝わる重量感は自分の相棒そのもの。

 だから絶対に負けない!!



「ハァァァッ!!」


 

 柄を握り直し、鍔迫り合いしていた拳を思いっきり弾き返した。

 そしてそのままの勢いで剣を斜め下へと振り下ろし、反対側から飛んできた拳を肩ごと斬り落とす。

 するとゴーレムはバランスを崩しドシャリと膝をついた。

 その隙に周囲に目を向ける。

 やっぱり騎士団は到着していない。

 ジェズアルド様は地面に魔力を送っているのか、その場から動く事ができないみたいだ。

 でもそのすぐ側には青い顔をしたレティーナ様が居る。

 きっと自力では逃げられない。 

 なら優先すべきはゴーレムだ。



「クソォッ!!」



 ジェズアルド様は必死な顔で魔力を送り、崩れかけていたゴーレムを復活させた。

 しかもさっきより一回り大きく膨れ上がってる。

 そして肥大した拳がさっきよりも数倍の速さで私を捉えた。

 咄嗟に剣を構え防御するも、相殺しきれず身体が吹き飛ばされてしまう。

 体中にビリビリと電気が走ったみたいだ。

 


「なめるなよ!」



 木に直撃する前に、私はくるりと身を翻して剣を地面に突き刺しブレーキをかけた。

 ゴーレムの一撃はひどく重く、まともに受けると一瞬で肉片に成りかねない。

 でもその分次の攻撃までに時間差が生じる。

 それは自分の長剣と同じ仕組みだけど、こっちはそれを溜めなし(ノーモーション)で繰り出せる。


 私は柄を強く握り直すと、グッと踏み込みゴーレムの目線と同じ高さまで飛び上がった。

 そして長剣を一気に振り下ろし、ゴーレムを両断した。


 分断された体がズルリと崩れ落ちる。

 粉塵が舞う中、ゴーレムはまた一つになろうと蠢く。

 なら再生が追いつかない位の速さで粉砕するまでだ。



「そのまま土に還れ!」



 私は畳み掛けるようにしてゴーレムの身体を斬り刻んだ。

 

 そして今度はドシャリと築山にしてやった。

 暫くそのまま様子をみたけど、もう動く気配はない。

 よし、無事に討伐完了だ。


 

「な……、あのゴーレムがやられるなんて……」


「もう逃がしませんよ。 ちゃんと証拠も頂きましたから」



 私は築山を背にしてにんまりと笑うと、エプロンのポケットから小さなペンを取り出した。



「これ、音声録音が出来る魔道具なんです。 今度はちゃんと準備して来ました」



 そして剣先をジェズアルド様へ向けた。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ