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08 気弱な少年・ツクシ

「あ、ありがとう……助かったよ……」

「君も運が無かったね。あんな奴らにからまれるなんて」

「うん。僕、いつもそうなんだ。悪い事ばかり起っちゃって……」

「ふーん、そういう奴もいるんだな。でも、今回は助かったんだから、いい事だよな!」

「そうだね……」

 俺が話していると、メアリがこっそり近づいて耳元で囁いた。

「ソーマ様、先ほどの騒動で人が集まってきました。場所をかえましょう」

「そ、そうだね。君も早く行こう!」

「え、えーっ!? ちょっと待ってよー!」

 俺に引っ張られた勢いで、ローブが取れた子どもは、輝く金髪で緑色の瞳をした俺より少し年上の少年だった。

 俺たちは途中の橋の所まで走ってきた。

「ぜぇ……ぜぇ……こ、ここまで来れば大丈夫だろ」

「はぁ……はぁ……」

 俺は息切れがすごかったが、少年も似たような状況だった。

「君、体力無いね」

「き、君だって息切れしているじゃないか……」

 すると、少しおかしくなって2人で笑いあった。

「ははっ! 俺はそうまって言うんだ」

「僕はツクシ。よろしくね、ソーマ!」

「それにしても、ツクシのそのかっこうは魔法使いって感じだよな」

「うん。僕、魔法使いだよ! まだ半人前だけどね」

 それを聞いた俺とゆうひとメアリは、顔を見合わせる。

 そして、俺はツクシの手を強く握った。

「ツクシ、俺と一緒に来てくれないか!」

「え?」

 ツクシは訳がわからないとでもいうように、首を傾げた。

「俺に魔法の使い方を教えてほしいんだ!」

「い、いいけど僕まだ半人前だよ?」

「それでも大丈夫。俺は使い方がわかればいいんだ」

「あのね、まだ僕より幼いソーマには、初歩から教えた方がいいかも……」

 ツクシが俺に触れると、だんだん顔が青ざめていく。

「ツクシ?」

「き、君のその魔力はなんだい?! この魔力数値は初心者のものじゃないよ!」

「え、そうなの?」

 もしかして、転生した時の、俺のスキルだったりして。

 俺がにやけていると、ツクシはため息をついた。

「僕から君に教える事は何もないよ……」

「えっ! そんな事言わないでくれよ。俺、魔力はあっても、使い方がわからなくちゃ使う事も出来ないんだ!」

 俺が慌てたのでツクシは俯いていた顔を上げる。

「うーん……わかった。僕も知っている事は教えるよ。お互い頑張ろう!」

「ありがとう! よかった、引き受けてくれて……」

 お礼を言われてツクシはうれしそうに笑った。

 俺たちは屋敷に戻り、ジェフおじさんにツクシを紹介した。

「おぉっ! 魔法使いが見つかってよかったな、ソーマ。しかし、なぜ君はずっとソーマの後ろに隠れているんだい?」

 そうなのだ。屋敷に着いてから、ツクシはずっと俺の後ろに隠れている。

 正直、動きづらいんだが。

「ツクシー、ジェフおじさんはそんな怖くないぞ?」

「はははっ。とって食ったりはしないぞ」

「す、すいません……僕、ちょっと人見知りで……はじめまして、ツクシと言います。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく。これからソーマを鍛えてくれ」

「は、はい! 僕に出来る限り頑張ります!」

 ツクシはよほど緊張しているのか、声が裏返っている。

 挨拶も済ませたので、全員俺の部屋に集まった。

 部屋に着いた途端、ツクシは俺にもたれかかってきた。

「おいツクシ、重いよー」

「ご、ごめんね。すごく緊張してたから、ちょっと気が抜けちゃって……」

「なら、早く部屋に入ろう。そしたら座っていいから」

「うん……そうさせてもらうよ」

 これでは、先が思いやられるな。俺は、部屋に入りながらそう思った。

 部屋では、皆でこれからの事を話した。ツクシはぐったりしているけど。

「じゃぁ、魔法使いのツクシも来てくれたので、これからの事を話し合おうと思う」

「それなら、そうま君の剣術の向上と魔法の習得が最優先だと思うの」

「確かにゆうひの言う通りだな」

「なら、私はこの屋敷で働いてくれる者を探します」

「うん、メアリはそっちを頼む。えっと、ツクシもう大丈夫か?」

「ありがとう、もう平気だよ。僕はソーマに教えながら、自分も魔法の勉強をしたいんだけど……」

「あぁ、それならおじさんの部屋に、魔導書がいっぱいあるから見せてもらいなよ」

「本当かい! それならすぐにおじさんに頼んでおかなくちゃ!」

 ツクシが慌てて出ていこうとしたので、俺はローブを掴んだ。

 反射的にツクシは転んでいたけど。ツクシ、すまん。

「ソーマ! 痛いじゃないか! いきなり引っ張らないでよ」

「ごめんごめん。でも、今は皆で話し合っている最中だから、少し落ち着こうな?」

「うぅ……わかったよ」

「ツクシ様は、魔法の事になるとうれしそうですね」

 メアリの言葉にツクシは笑顔になる。

「うん! 魔法はお母さんが教えてくれたから、学ぶのが本当に楽しいんだ」

「まぁ、お母様が?」

「うん。でも、もう死んじゃったけど……」

「確か、そのローブ、お母さんの形見って言っていたよな?」

「そうだよ。これは魔法使いの証だから大切にねって言われたんだ」

「そっか。なら、それ引っ張って悪かったな」

「本当だよー。これから気を付けてね」

 そして、俺とツクシは笑いあった。

 これからの事が決まったが、俺ちゃんと習得出来るのかな。


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