07 魔法使い、探し中
メアリが弓の使い手だとわかってから、2週間が過ぎた。
「そろそろ、魔法使いも欲しいところだな」
「そうだね。確か、近くの街に魔法使いが集まる教会があるはずだよ」
「なら、そこに行ってみるか!」
俺とゆうひが話していると、ノックが聞こえた。
「どうぞ」
顔を出したのはメアリである。
「ソーマ様、出かけられるのでしたら、私も一緒に連れていって下さいませ」
「え、いいけど屋敷の方は大丈夫なんですか?」
「はい。ほとんど終わらせていますし、だんな様にも許可は取っています」
「そっか。なら、お願いします」
「それとソーマ様。私に敬語は不要ですよ。ゆうひ様に話しているようにして下さい」
「わかった。メアリ、よろしくね」
「はい、ソーマ様!」
俺たちはジェフおじさんに挨拶をしてから屋敷を出た。
道中ではこの前のようにワーウルフに襲われる事もなく、無事に街に着いた。
「うわぁーっ! この間の町より広くて人もいっぱいだ!」
「そうま君、よそ見をしていたら、迷子になっちゃうよ」
俺が振り返ると、ゆうひが肩を落としているのがわかった。
もしかして、呆れられている?
横を見ると、メアリが微笑んでいた。こっちは見守られている感がすごい。
「だ、大丈夫だよ! この前みたいにぶつかったりしないもん!」
俺は頬を膨らませた。すると、ゆうひが俺の手を握る。
「これで、はぐれる事はないから安心して」
なんか、完全に子ども扱いだな。
ゆうひに手を引かれながら、俺たちは教会に着いた。
中に入ると、牧師が奥に立っていた。
「ようこそ、いらっしゃいました。今日はどのようなご用件で?」
牧師は笑顔のまま話しかけてくる。
「あの、ここは魔法使いが集まる教会だと聞きました。なので、1人連れていきたいのですが……」
すると、牧師から笑顔が消えた。
「それは出来ません」
「なぜですか?」
「子どもの遊びに必要な魔法使いをさく事は出来ないと言っているんです」
「遊びなんかじゃありません! 旅に出るのに必要なんです!」
「幼いあなたには無理ですよ。さぁ、お引き取り下さい」
俺がまだ何か言おうとしているのがわかったのか、牧師が片手を上げた。
「この者たちはお帰りだ。さっさと連れ出して下さい」
すると、ガタイのいい男たちが数人現れて、俺たちを教会の外へ追いだした。
「もう二度とここへは来るんじゃねぇぞ!」
男はそう言って、ドアを勢いよく閉めた。
仕方がないので、俺たちは教会を後にする。
「まったく、なんなんですかあの対応は!」
教会を出てから、メアリはずっと怒っていた。
「仕方ないよ。やっぱり俺が幼いのが悪いんだ」
「そうま君は悪くないよ。今回は運が無かっただけ。また探そう?」
「そうですよ、ソーマ様! あんな所に頼らなくても魔法使いはきっと見つかります!」
「ありがとう、2人とも……」
2人に励まされて元気が出た俺がふと顔を上げると、何やら人が集まっているのが見えた。
「なんだろう、何かの催しかな?」
「いいえ、あれはどう見ても誰かがからまれているようですね」
「あ、本当だ! 誰か真ん中にいる!」
よく見ると、1人をガラの悪い男たちが数人で囲んでいた。
「おいおい、魔法使いさんよ。いいの持っているじゃねぇか。俺にくれよ」
「だ、ダメです! これは母の形見なので渡せません!」
「あぁん? なら金よこせや!」
「ひぃーっ!」
どうやら、からまれているのは子どもらしい。というか、あの男たちって……
「なぁ、ゆうひ。あのからんでいる男たちって……」
「別の町でそうま君がぶつかった奴らね」
やっぱりかー! しかし、子どもにからんでいるのは見過ごせん!
「よし、俺が助けてくるよ!」
いざ、助けに行こうとしたら、ゆうひとメアリから肩を掴まれた。
「あなたは、じっとしていなさい」
「そうですよ、ソーマ様。あなたが出なくてもいいんです」
「でも……」
「大丈夫。私に任せて」
ゆうひはそう言うと、男たちに近づいた。
「あなたたち、また弱い者いじめをしているの?」
「うるせぇな! あんたには関係ないだろ! って、この間のやばい女!」
「あら、また痛い目にあわないとわからないかしら」
「に、逃げろーっ!」
青ざめた男たちはあっという間に逃げていった。
ゆうひ、恐るべし……
からまれていた子どもは、呆然としていた。
というより、白いローブで顔が隠れているから、多分そうだろうと思う。