05 仲間を集めよう!
俺はなるべく早く目的の場所に行きたかったので、ジェフおじさんにゆうひと一緒に海の向こうの国に行きたいと伝えた。
ジェフおじさんは、最初は驚いていたが、その顔はみるみる怒りへと変わっていった。
「何をバカな事を言っているんだ! お前はまだ幼いんだぞ。あなたもなぜ止めないんだ!」
「申し訳ございません……」
「ジェフおじさん、ゆうひを責めないで! ゆうひは無理やりこの世界に連れてこられたんです!」
「連れてこられた?」
ジェフおじさんが首を傾げていたので、大体の事を説明した。
「なるほど……だが、あまり信じられないな、別世界から来たなんて事、あり得るのか?」
「彼女がここにいるのが証明です。だから俺は、すぐにでもそいつに会って一発殴りたいんです!」
「こら! 物騒な事を言うんじゃない。さっきも言ったが、お前はまだ幼い」
ジェフおじさんの言う事はわかる。でも、そんな長く待ってられないよ!
俺は唇を噛みしめた。すると、ゆうひが肩に手を置いてきた。
「ゆうひ?」
「私の事を考えてくれてありがとうございます。でも今のままでは、そうま様が危険にさらされる事になります」
「そうだぞ? 今は忍耐の時期だと思えばいい。お前も魔法を使いこなせないといけないからな」
「え? 覚えてもいいんですか!」
「そんな事情なら仕方ないだろう。だが、また裏庭を焼かれても困るからな……」
ジェフおじさんは少し考えると、人さし指を立てた。
「まずは、魔法使いを探しなさい。その者から魔法の使い方を習えばいい」
「あれ、でもおじさんは魔法の研究をしているんじゃないの?」
「研究はしているが、使えるかはまた別だ」
なるほど。魔法にも適性があるのか。
「お前には素質があるから楽しみにしているぞ」
そう言ってジェフおじさんは、俺の頭を優しく叩いた。
話が終わり、ジェフおじさんの部屋を出た俺とゆうひは、俺の部屋に戻っていた。
「よかったー。すごく怒られたけど、最終的にはわかってくれたみたいで……」
「でも、本当にありがとう。だけど、だんな様の言う事もわかるよ」
「俺がまだ幼いって事か?」
「そうだよ。あと10年は耐える時期じゃないかな」
「10年?! そんなに待てないよ! そんな事していたら相手が死んじゃうかもしれないだろ?」
「そこは安心して。その人は人間じゃないから」
「え、どういう事?」
「多分、あの人は魔人か魔王だと思う。だから私たちの10年なんて少しの時間しか感じていないわ」
「へぇー。この世界、魔王もいるのか……」
「そうま君はファンタジーの物語が好きだったものね」
「そうだ、さっき俺の事そうま様って呼んでただろ? ちょっとびっくりしたぜ」
「だんな様の前でそうま君とは呼べないでしょ?」
「俺はいつも通りでいいと思うんだけどなー」
「だめよ。そこはちゃんとしないと」
相変わらず、そんなところは真面目なんだな、ゆうひは。
俺が苦笑いを浮かべていると、ゆうひが提案をしてきた。
「まずは、仲間を集めないといけないわね。少なくとも魔法使いは探さないと」
「じゃぁ、とりあえず出かけようか」
俺たちが部屋を出ると、メイドさんがこちらに歩いてきた。
「坊ちゃん、どちらに?」
「あ、ちょっと人探しに……」
「なら、あまり森の方へは行ってはいけませんよ? 人喰い狼が出ると聞いていますから」
メイドさんは忠告してきたが、俺はゆうひの手を取って走りだす。
そして振り返ってこう言った。
「彼女がいるから大丈夫だよ。いってきます!」
「あ、坊ちゃん!」
俺とゆうひは屋敷を出て、しばらく人影のない道を歩いていた。
「一応人材を集めるために、まずは近くの村からあたってみるか」
「そうだね。遠距離攻撃が出来る人も欲しいわね」
話している時、急にゆうひの目がうつろになった。
「ゆうひ?」
すると、ゆうひの体がいきなり黒く光りだした。
それは一瞬の事だったが、少ししてゆうひは元に戻った。
「あれ、そうま君? 私どうしたの……」
「それは俺が聞きたいよ! いきなり光りだすんだもん」
「光?」
ゆうひが首を傾げていると、茂みが音を立てた。
「な、なんだ?」
俺たちが身構えていると、茂みから現れたのは、たくさんの狼だった。
「え、狼?! しかも数多いんですけど!」
「あれはワーウルフだよ。でも、なんでこんな所に……」
「グルルル……」
ワーウルフたちは、唸り声をあげながら少しずつ近づいてくる。気づけば囲まれていた。
「こ、これって、ちょっとやばくない?」