最終話 後日談(後編)
「ジェフおじさん、ただいま帰りました!」
俺が外から呼びかけると、ドアが開きジェフおじさんが出てきた。
「おぉ、よく帰ってきたな。まぁ、入りなさい」
ジェフおじさんに促されて、俺とゆうひは中へと入る。
ラージャにワープしてもらって、それからは馬に乗ってここまで帰ってきた。
「本当に久しぶりだな、ソーマ。元気にしていたか?」
「はい。ジェフおじさんは、少しやせましたか?」
「あぁ。少し前に体をこわしてね、今はあまり外出ができないんだよ……」
そう言ったジェフおじさんの顔色は、あまりよいという風ではなかった。
「色々聞きたい事もあるが、まずはソーマに確認したい事があるんだ」
「なんですか?」
すると、ジェフおじさんは立ち上がり、新聞を持ってきた。
それを広げて、ある記事を指さす。
「ここに書いてある事は事実か?」
見るとそこには、アイーダ国の事が書かれていた。
そして見出しには、「城は魔王に乗っ取られ、1人の少年によって倒され、アイーダ国に平和が戻った」と書かれていたのだ。
なんで知れ渡っているのーっ!?
俺は驚きのあまり、声が出なかった。
隣を見ると、ゆうひも驚いていた。
「あの、ジェフおじさん……確かに、ゆうひを苦しめていた魔王は倒しました」
「おぉっ! やはりソーマだったか」
「でもこの事は、国民は知らないはずなんです」
「だとすれば、誰かがバラしたの?」
「うーん、噂が広まったから、記者の人が面白がって書いたのかな」
「その件で、ちょっと困った事があってな……」
ジェフおじさんは、とても気まずそうだった。
「どうかしたんですか?」
「実は、魔王を倒した勇者として、国王がお呼びなのだ」
それを聞いた俺は、さすがに耳を疑った。
国王が俺を?
★★★
「もう二度と、ここには来ないと思っていたのに……」
そう、俺を捨てた本当の両親。もう顔も見たくなかったのに。
俺は兵士に事情を説明すると、あっさり中に入れてくれた。
でもこの兵士さん、どこかで見た事あるような……
俺が考えていると、大きな扉の前にきた。
「この中で、国王様がお待ちです」
「ありがとうございます」
俺が頭を下げると、その兵士も礼をして扉の前から呼びかける。
「国王様、来客なのでお通しします!」
「入れ」
「失礼します!」
扉を開けると、国王がうれしそうに駆け寄ってきた。
「おぉっ! そなたが魔王を倒した勇者か。待っておったぞ」
「俺は勇者なんかじゃありません」
「まぁ、そう言うな。なんなら、私たちの息子として迎えよう! 名は何と言うのだ?」
「……ソーマです」
その名前を聞いて、国王の動きが止まる。
「はて、どこかで聞いた名だな」
「それはそうですよ。だって、あなたたちが捨てた子の名前なんですから」
「捨てた? 私たちに子はおらんよ」
俺はぼう然とした。この人は、俺の存在をなかった事にしている。
それがわかり、俺は笑みをつくる。
「そうですか……でも、お断りします」
「な、なぜだ! 城での暮らしはよいものだぞ」
「俺が欲しいのは、大切な人と一緒に暮らす事です」
俺はちゃんと笑えているだろうか。
怒りを抑えながら、最後に俺は言う。
「あなた方とは、もう二度と会う事はありません。失礼します」
俺は頭を下げ、その場を後にする。
後ろで国王が何か言っていたが、気にせず俺は城を出ていった。
「やはり、あの時の坊やだったんですね」
外ではあの兵士が待っていた。
「大きくなりましたね。元気でいてくれてよかった」
「もしかして、あなたが俺を森へ連れていったんですか?」
「えぇ。いい人に巡り合ったようで安心しました」
「はい。今はとても幸せです」
「そうですか……では、どうかお元気で」
お互い頭を下げて、俺は屋敷へと帰った。
★★★
「あっ、おかえりそうま君!」
「ただいま、ゆうひ」
屋敷に帰ると、ゆうひが外で待っていた。
「待つなら、中で待っててくれてもよかったのに」
「だって、すぐに会いたかったんだもの」
ゆうひが微笑んでそんな事言うので、俺は照れてしまう。
「……へぇー。じゃぁ、王子になる事やめちゃったの?」
「俺の事、忘れた人たちの子どもになんてなるもんか!」
「まぁ、私にとっては、王子様なんだけどね……」
俺が怒っていると、ゆうひがぽつりと呟いた。
「え、何か言った?」
「ふふっ。なんでもなーい」
微笑んでいるゆうひに、俺は見とれてしまった。
すると、ゆうひが手を握ってきた。
「そうま君、これからもずっと、一緒にいてね」
「あぁ、もちろん。もうこの手を離さないよ」
そして俺たちは、頬を寄せ合って笑いあった。
ー完ー
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