38 後日談(前編)
あれから3年の月日がたった。
孤児院も出来上がり、子どもたちは毎日楽しく過ごしている。
アルタさんたちも、孤児院が出来るまでの間、子どもたちの先生をしてくれた。
アルタさんは知識全般、ガイナは武器の扱い、ツクシは魔法や魔力の制御、シルフィは護身術などである。
メアリは料理を教えていたが、なぜかゆうひも混ざって聞いていた。
しかも、表情は真剣そのものだった。
あと、孤児院が出来る前に、国王が息を引き取った。
「どうか、安らかに眠って下さい……」
俺は手を合わせて頭を下げる。
そして、俺の出発する日がやってきた。
「お兄ちゃん、行っちゃやだよ!」
「そうだよ、もっとここにいてよ!」
「皆、ごめんな。俺ももっと一緒にいたかったよ」
俺は子どもたちの頭を撫でながら言った。
「ソーマ、サンダーバードの縄張りには気をつけろよ。あとそれから……」
「アルタさん、俺のお母さんじゃないんだから、大丈夫ですよ」
「そうだな。ソーマはいくつもの危険を乗り越えてきたのだから、心配はいらないな」
「ありがとうございます。それよりも、この国の方が心配です」
そうなのだ。国王が亡くなってから、ある噂がたっていた。
それは、「国王が魔物にとりつかれて死んだのではないか」というものである。
まぁ、噂程度なので心配はいらないと思うが、念のため俺は国を出る事にした。
「この国は大丈夫さ。変な噂はあるが、皆で協力して発展させていくよ」
「それは楽しみですね!」
「お2人とも、話はそれくらいにして。ドーラ様がお待ちですよ」
「あぁ、ごめんメアリ、ドーラ。すぐ行くよ!」
俺はアルタさんに頭を下げて、ドーラたちの所へ走っていく。
振り返ると、ゆうひとアルタさんが何か話していた。
話し終わったゆうひは、俺の所に走ってくる。
「ゆうひ、アルタさんと何話していたんだ?」
「そうま君をよろしく頼むって言われたのよ」
「えー、俺信用ないなぁ……」
「そんな事ないよ。ちょっと心配なだけだから」
「俺は小さな子どもかい!」
「ふふっ」
え、ゆうひ今、笑った?
俺は驚いた。だって、1番見たかったものが見れたのだから。
「ゆうひ、今笑ってた?」
俺の問いに、ゆうひは静かに頷いた。
「よかった、よかった! やっと笑えたんだね」
「そうま君のおかげだよ。ありがとう……」
そう言ったゆうひは微笑んでいたが、その目には涙が浮かんでいた。
それがうれし涙である事を、俺は願いたい。
★★★
「じゃぁ、皆さんお世話になりましたーっ!」
俺とゆうひはドーラに乗り、空へと飛び立つ。
「ドーラ、ビーストランド側から帰ろう。そこはサンダーバードの縄張りから外れるらしいから」
「承知した」
それからの空の旅は穏やかなものである。
「それにしても、なんか久しぶりだね」
「え、なにが?」
「2人っきりになる事だよ」
「あー、そういえばそうだな。もうずい分前の事のように思うよ」
ふと、ゆうひが俺の手を握ってきた。
「ゆ、ゆうひ?!」
「私はうれしいよ。そうま君と一緒にいられて……」
「ゆうひ……」
「おい、俺の背中でいちゃつくのはやめろ」
俺とゆうひが見つめあっていると、ドーラが不機嫌な声を出す。
全く、空気をよんでくれよ。
俺はため息をつきながら、その背中を優しく叩く。
「ごめんって、ドーラ。怒らないでくれよ」
「ふんっ」
俺はそれから魔物の森に着くまでの間、ドーラの機嫌をとっていたのであった。
魔物の森に着くと、ラージャが待っていた。
「あれ、なんでラージャがここにいるの?」
「もうそろそろ、お主たちが帰ってくるだろうと思ってな」
「そうだったのか。あと、改めてありがとうラージャ、助けてくれて」
「まぁ、わしの力はあんなものではないがのぅ。分身でも助けになってよかったわい」
ラージャは微笑むと、俺に歩み寄り頬に手を添える。
「どうじゃ? ここでわしと一緒に暮らさんか」
「え?」
「お主の魔力があれば、ここのボスにもなれるかもしれんぞ」
「い、いや、俺帰る所があるんで、遠慮します! それよりも、ベルグールにワープしてくれないか?」
「ははっ、冗談じゃよ。ここはわしが仕切っておるから譲らんよ」
「それなら、言わないでくれると有り難いな……」
こっちは耳元で囁かれて、心臓がもちません。
「全く、若い奴をからかうのは面白いのぅ」
「勘弁してくれ……」
俺がぐったりしていると、ラージャが思いだしたように言う。
「そういえば、ベルグールとかいう所にワープさせるとか言っていたのぅ」
「よかった、覚えていてくれたのか」
「もちろんじゃ。しかし、離れるのはさびしいのぅ」
「ラージャ様、ワガママを言ってはいけませんよ」
「そうです。早く私たちをワープさせて下さい」
ゆうひとドーラに言われて、ラージャは仕方ないとでもいうように指を鳴らした。
すると、俺とゆうひの体が光りだす。
「ありがとう、ラージャ。またいつか会おうな!」
「あぁ、その時を待っとるよ」
姿が消えそうになるその時、俺ははっと思いだす。
「しまった! 馬忘れた!」
俺の発言に、その場にいた全員が呆気にとられていた。




