36 2人なら出来る
次にワープした所は、城の外だった。
今度は失敗する事なく、俺は着地する。
「よしっ、今度はうまくいったぞ」
「何をしとるんじゃ、ソーマ! 早く走らんか!」
「え?」
前を見ると、子どもたちが全速力で走っていた。
振り向くと、ダークホールが城を飲みこんで、さらに大きくなっていた。
「うわあぁっ! 皆、早く遠くに逃げるんだ!」
「言われんでも、もうとっくに逃げとるわい」
俺たちは急いでその場から離れた。
だいぶ離れた所では、ゆうひやアルタさんたちが待っていた。
「そうま君!」
「ゆうひ、皆ももっと遠くへ逃げてくれ!」
「ソーマ、なんだあの黒い物体は……」
「説明は後でします。今は逃げて下さい!」
「わかった。全員、城からもっと離れるんだ!」
アルタさんの指示で全員が走りだす。
俺は皆が走り去ったのを確認して、その場に残った。
「そうま君、何しているの? 早く逃げないと……」
ゆうひが戻って来て、俺の手を掴む。
だが俺は、考える事に集中する。
あれはギリクを飲みこんで大きくなった。だとすれば……
「ゆうひ、試したい事があるんだ」
「試すって、何を……」
ゆうひが首を傾げていたので、俺はダークホールを指さす。
「あれは、ギリクを飲みこんで大きくなっただろ?」
「そうだけど……」
「だったら、ありったけの魔力をぶつければ、逆に消滅するんじゃないかな」
「そんなの、ダークホールを巨大化させるだけじゃないの?」
「面白いのぅ。あれと同じ魔力をぶつければ出来ない事もないじゃろう」
気づけば、ラージャたちが戻って来ていた。
「あの、子どもたちは……」
「安心しろ。出来るだけ遠くに逃げるように指示しておいた」
「そっか、よかった……」
ほっとした俺を見て、アルタさんはあごに手を当てて考える。
「しかし、あれだけの魔力をどうやって集めれば……」
すると、ツクシがひらめいたように手を叩いた。
「そうだ、ソーマの魔力ならいけるかもしれない!」
「だが、あれが成長する方の確率が高い。それでもやるのか?」
「やります。それで皆を救えるのなら!」
俺が強く頷くと、アルタさんはため息をついた。
「……わかった。でも、危険だと思ったら、すぐ逃げろよ」
「はい!」
俺は皆から少し離れて、ダークホールを見つめる。
しかし、隣に気配を感じたので振り向くと、そこにいたのは、ゆうひだった。
「あれ、ゆうひ?」
「私も手伝うよ。1人になんかさせないから」
「……ありがとう、ゆうひ」
俺がお礼を言うと、ゆうひは頷いた。
「行くぞ!」
俺は杖を握りしめ、ゆうひは剣を顔の前で平行に構えた。
俺の中にある魔力を、全部集めるんだ。
意識を集中させている俺の隣で、ゆうひは剣を突き出した。
「はあぁっ!」
「燃やし尽くせ、ギガ・フレイム!」
ゆうひは黒い光を放ち、俺は最大の魔力をこめた炎を放った。
「「はあぁーっ!」」
ダークホールは、俺たちの魔力を飲みこんだが、大きくなるどころかどんどん小さくなった。
やがて、跡形もなく消滅したのだ。
城があった場所には、えぐり取られた地面しか残っていない。
「き、消えた?」
全力を出し切った俺とゆうひは、状況を理解するとその場に座りこんだ。
「はぁー……もう、動けないよ……」
「ソーマ、ゆうひ殿!」
俺たちが休んでいると、向こうからアルタさんたちが駆け寄ってくる。
全員合流した後、アルタさんが俺の頭に手を置いた。
「まさか、本当に消滅させてしまうとはな」
「お2人だから、出来たのかもしれませんね」
「ソーマはやっぱりすごいよ! ゆうひさんと一緒だからだね」
メアリやツクシからもほめられて、俺は照れてしまい俯いた。
「ふー、ギリクもいなくなった事じゃし、わしもそろそろ消えるかのぅ」
「ありがとう。ラージャのおかげで勝つ事ができたよ」
「わしは少しだけ手を貸しただけじゃよ。後はお主たちの力じゃ」
そう言ったラージャの体は、少しずつ消えかかっていた。
「では、またあの魔物の森で待っておるよ……」
最後の言葉を残し、ラージャは消えていった。
それを見送った俺は、アルタさんに肩を掴まれる。
「それで、ソーマよ。説明してもらおうか、どうしてこうなったのかを」
アルタさんは今まであった事の説明を求めてきた。
「は、はい……」
俺はアルタさんの圧に負けて、これまでの事を説明した。




