35 脱出
「ギリク、お主正気か?」
「私はいつだって正気ですよ。恥をさらすぐらいなら、消えた方がいいですからね……」
ギリクは笑っていたが、その笑みはどこか悲しげだった。
「ギリク……」
「それでも、私1人が消えるのは耐え難い。あなたたちも道連れにしてやります!」
ちょっとかわいそうかもって思ったのに、ギリクはギリクだった。
俺は頭を振って、杖を握りしめギリクに向ける。
「そんな事させるか! ボン・エアー!」
風をまとった炎の球をいくつも放つと、その爆発でギリクはよろける。
「くっ、さっさと観念しなさい」
「観念するのはそっちだろ! ギガ・フレイム!」
俺は容赦なく、次は巨大な炎の玉を放った。
「ぐっ!」
俺の攻撃を受けるのが、精いっぱいのギリクが一歩下がると、ダークホールが飲みこんでいく。
「な、なに?!」
状況を理解したギリクは、俺の方に両手を伸ばしてきた。
そして、俺の体を思いっきり掴んだ。
「うわっ、何するんだギリク!」
「言ったでしょう……あなたたちも道連れだと……」
「は、離せギリク!」
「そうま君!」
ゆうひが慌てて俺の腕を掴んだ。
ラージャとドーラも飲みこまれないように、ゆうひを支えている。
「さぁ、皆で仲良く闇におちましょう……」
「誰が、あなたなんかとおちるもんですか!」
もう体半分がダークホールに飲まれているギリクに、ゆうひが持っていた剣をギリクの頭に突き立てた。
「ぎゃあぁっ!」
「もう、あなたに奪わせはしないわ!」
ギリクは悲鳴を上げ、俺から手を離した。
そして、ギリクはダークホールに飲まれて消えていった。
ゆうひの言葉は、あいつに届いたのだろうか。
俺はゆうひを見たが、ゆうひは無表情のままだった。
「というか、ギリクが消えたのに、ダークホールが消えないんだけど!」
「消えるどころか、さっきよりも大きくなったのぅ」
「ラージャ、何のんきな事言ってるんだよ! 早く逃げないと」
「まぁ、慌てるでない。わしのワープでお主たちを外に連れだしてやろう」
「本当か、ありがとうラージャ」
それから俺たちは、ダークホールに飲まれないように距離をとった。
「では、行くぞ」
「あぁ、待ってラージャ!」
「なんじゃ、ソーマ。急がんとダークホールがすぐそこまで来とるぞ」
「うわあぁっ! じゃぁ早く地下に頼む!」
「地下じゃと? 外ではないのか」
「地下には、この世界に転移させられた子たちがたくさんいるんだよ。その子たちも連れていってくれないか」
「ふむ、いいだろう。ドーラよ、わしはソーマを連れていくから他の者を頼めるかい?」
「承知しました、ラージャ様」
ドーラは倒れている国王を掴み、ラージャに頭を下げる。
すると、ゆうひが俺に近づいてきた。
「そうま君、気をつけてね」
「あぁ、わかってるよ。大丈夫、ちゃんと戻るから」
俺はゆうひの手を握って、安心させるように言った。
「こら、いちゃついていないで、さっさとこんか」
「ごめん、ラージャ。すぐ行くから!」
俺は慌てて手を離し、ラージャの所に行く。
ゆうひは不安そうだったが、ドーラに乗ってもう一度俺の方を向く。
「必ず戻ってきてね!」
ゆうひの言葉に、俺は強く頷いた。
「さぁ、ドーラよ。その者たちを頼むぞ」
「はい。ラージャ様もお気をつけて」
ドーラはそれだけ言うと、すぐに飛び立った。
そして窓を破り、外へと脱出した。
「よし、わしらも行くぞ」
ラージャが指を鳴らすと、俺たちはその場からワープした。
★★★
「あいたっ! 着地失敗したぁー……」
「なにやっとるんじゃ、お主は」
着地に失敗した俺を見て、ラージャは呆れ顔だった。
「あっ、落ちてきたお兄さんだ!」
「本当だ! 隣の女の人は誰?」
「もしかして、お兄さんの恋人なんじゃないの?」
何やら、まずい誤解がうまれようとしている気がする。
俺は苦笑したが、時間がない事がわかったので子どもたちを自分の所に集めた。
「皆、集まって。これから外に脱出するよ!」
「えっ、それじゃぁお兄さんが魔王をやっつけたの?」
「そうだよ。そして、もうその魔王はここにはいないから、皆自由なんだよ」
俺の言葉に、子どもたちは大喜びした。
「やったーっ!」
「じゃぁ、もう怖い事なんかないんだね!」
「そう。君たちがやりたい事をやればいいんだ」
「おい、ソーマ。そろそろダークホールがここまでくるぞ」
「あっ、そうだった!」
子どもたちがはしゃいでいたので、全員に呼びかける。
「皆、早く脱出するから、このお姉さんの所に集まってくれ!」
子どもたちはすぐ言う事を聞いてくれた。
ぞろぞろと、ラージャの所に集まってくる。
「ソーマ、これで全員か?」
「うん、全員集まったみたい。じゃぁ、頼む!」
「よし、ならお前たち行くぞ!」
ラージャはもう一度指を鳴らした。
ダークホールがそこまで来ていたが、ギリギリワープが間に合って俺たちは消える。




