33 救世主って、なぜお前がここに?
「やめろーっ!」
俺が叫んだその時、ズボンのポケットが光りだした。
探って取り出してみると、ドーラからもらった球だった。
「す、すごい光……」
「な、なんだこの光はっ!」
まばゆい光が、俺たちの周りを照らした。
やがて光は無くなり、現れたのはラージャだった。
しかし、獣の姿ではなく、会った時と同じ美女の姿だった。
「久いのぅ、ギリク」
「えっ、ラージャ?!」
「ラージャ、なぜお前がここにいるのです」
「今のこのわしは分身みたいなものじゃ」
俺とギリクが驚いていると、ラージャは転がっている球を指さす。
「ドーラに前もって預けておいて正解じゃったな。それよりギリクよ……」
ラージャから笑みが消え、ギリクを睨みつける。
その表情は怒りそのものだ。
「わしの可愛い僕から、その汚い足をどけい」
ギリクにラージャの怒りが伝わったのか、ドーラから足をどけてこちらに向き直る。
それよりも、俺には1つ疑問があった。
「ラージャ、なんで出てきてくれたんだ?」
「なんでって、わしのお気に入りが殺されるのは嫌じゃからのぅ」
すると、ラージャは俺に歩み寄り、そっと頬に手で触れた。
「それに、お前がギリクを殴るのを、この目で見たかったのもあるかのぅ」
「残念ですね。その者は私に触れる事すら出来ないのですから」
「ならば、わしが手を貸そう」
「手を貸すって、一体何をする気なんだ?」
「こうするのさ。マジックエリア、解除!」
ラージャの言葉に反応して、部屋全体に魔法陣が浮かび上がった。
だが、その全部が音を立てて崩れ去った。
「なっ! 私の魔法陣を打ち消しただと?」
「わしが気づかんとでも思ったかい? 見くびられては困るねぇ」
驚いているギリクを見て、ラージャはとてもうれしそうだ。
そして、俺は今までの戦いを思いだす。
「そうか、予め魔法陣で俺の力を制限していたのか」
「これで、ソーマも心置きなく戦えるだろう」
「ありがとう、ラージャ!」
「ふんっ、魔力の制限がなくなったくらいで、私に勝てるとでも?」
自分の魔法陣が解かれた事が悔しいのか、ギリクが歯を食いしばりながらこちらを睨みつけてくる。
「カラクリがわかれば、こっちのもんだ!」
俺は立ち上がり、杖をギリクに向けた。
「お前に勝ってやるさ。そして、ゆうひも返してもらうぞ」
「面白い事を言いますね。なら、やってみなさい!」
俺とギリクが睨み合っている時、ゆうひがラージャに呼びかけた。
「ラージャ様、私のこの縄を解いて下さい!」
「おや、お前そんな姿で何をしておる?」
「ギリクに捕まっているんです! 早くそうま君の所に行きたいのに……」
「しょうがない奴じゃのぅ」
俺はその会話が聞こえたので、後ろを振り向く。
ラージャはため息をつきながら、指をパチンと鳴らした。
それに合わせて、ゆうひを縛っていた縄はちぎれた。
「ほれ、これで動けるじゃろう」
「ありがとうございます!」
ゆうひはお礼を言って、こちらに走ってくる。
「そうま君!」
「ゆうひ! こっちに来たらダメだ。離れてろよ」
「大丈夫よ。それよりも、あいつをぶっとばすんでしょ?」
「あぁ、そのつもりだよ」
「ゆうひ、あなたは私の新しい器になるのですから、大人しくしていなさい」
「嫌よ。もう私は、大切なものを失くしたくない!」
ゆうひが剣を構えたので、俺も杖を構えた。
ドーラも起き上がり、俺たちの方に飛んでくる。
「くくく……それで勝ったつもりですか?」
ギリクは笑みを絶やさない。
なぜ、そこまで勝利を確信できるんだ。
俺はギリクの圧に負けそうになるが、仲間たちを見てもう一度前を向く。
「その希望がどこまで続きますかね……」
「私たちは負けない! はあぁっ!」
ゆうひが一気に駆けだし、ギリクに斬りかかった。
何度も斬撃を入れるが、ギリクは笑みを絶やさず受け流していく。
「ゆうひ、避けろ! ボン・エアー!」
俺の声を聞いて、ゆうひが一旦離れる。
そこへ、風をまとった炎の球を放ち爆発させる。
「くくく……さっきよりは威力が増したようですね」
「これでもきかないのか!」
「ギリクはわしら魔王の中でも、防御にたけているからのぅ」
「もしかして、また魔法陣とかはってるんじゃないのか?」
「あり得るのぅ。おい、奴の足止めを頼めるかい?」
「お任せ下さい、ラージャ様」
ドーラはラージャに頭を下げると、ギリクに向かって飛んでいく。
「グオォーッ!」
「雑魚の魔物め、お前など相手になるものか!」
ドーラとギリクが激突し、火花が飛び散った。




