32 圧倒的な強さ
「そいつをいじめるのは、それくらいにしてもらおうか」
俺がぼう然としていると、上からドーラが降りてくる。
そして、素早く俺とギリクの間に割って入った。
「おっと」
「ドーラ!」
「おや、お前はラージャの所にいたドラゴンですね」
「よく知っているな。その女から得た情報か」
ドーラはゆうひを指さした。
「そうですよ。彼女の目を通して、私は何でも知っているのです」
ギリクは嫌な笑みを浮かべ頷き、ゆうひの方に近づいていく。
「今から儀式をするので、そこで見ていなさい」
「儀式って、ゆうひをどうするつもりだ!」
「この体を捨て、彼女に移動するのですよ」
ギリクは、愛おしそうにゆうひの顔に触れる。
「幸いにも、彼女の心はもう絶望に染まっていますから、壊すまでもないでしょう」
ギリクの言葉に、俺はまた言葉を失ってしまう。
それを見たドーラは、俺の肩に手を置く。
「ソーマ、奴の言葉に耳を貸すな」
「でも、俺がゆうひを連れてきたせいで……」
「それでも、お前はあの女を助けるためにここまで来たんだろう」
ドーラは俺から手を離し、一歩前に出た。
「なら、奴を止めて女を助けるといい」
「わかったよ、ドーラ。弱音をはいてごめん」
「謝るくらいなら、奴を止めるために動け」
ドーラはギリクから視線を外さず俺に言った。
俺は頷き、ギリクに視線を向ける。
「話は終わりましたか?」
「あぁ、終わったよ。俺はお前を絶対許さない!」
「おやおや、さっきので絶望したかと思ったのですが、やはり始末しなければいけませんね」
すると、黒いモヤが集まり、どんどん巨大化していく。
ギリクが入っていた国王の体は、力が抜けたように近くの椅子に倒れこんだ。
やがてモヤはなくなり、現れたのは頭に角があり赤い目をした黒い怪物の姿だった。
コウモリの羽もあって、その姿は悪魔のようだ。
「この姿は、あまり好きではないんですがねぇ」
ギリクは少し残念そうな顔をしたが、再び笑みを浮かべる。
「しかし、儀式の邪魔をされては困りますからね!」
「あれが、ギリクの正体?」
俺はその大きさに驚いたが、頭を振って杖を握りしめる。
「圧倒されてたまるか。行くぞ、ドーラ!」
「承知した!」
頷いたドーラの体は光だし、元のドラゴンの姿へと変わっていく。
「グオォーッ!」
「ふんっ。お前たちに私を止める事は出来ませんよ」
羽を広げて、ギリクは天井近くまで昇っていく。
「そんなの、やってみないとわからないだろ!」
俺たちも離されないように飛んでいく。
杖を握りしめた俺は、ギリクに向けて攻撃を放つ。
「ボン・エアー!」
風をまとわせた炎は、爆発する前に黒い球が現れ吸収された。
「なっ、吸収された?!」
「ほら、お返ししますよ」
黒い球からさっき俺が放った攻撃が返される。
しかも、ギリクの力を上乗せしているのだ。
「ドーラ、避けてくれ!」
「言われなくてもわかっている」
なんとかドーラは避けてくれた。
すぐさま俺も別の魔法を放つ事にした。
「これならどうだ。フレイム!」
炎の球をいくつも放ってみたが、やはり吸収されてしまう。
「甘い、甘いですね。何をしても無駄ですのに」
ギリクは笑みを浮かべながら、攻撃をはね返してくる。
「うわぁっ!」
俺の攻撃は、全てあいつに吸収されるか、はね返されてしまう。
俺が悩んでいると、ドーラが話しかけてきた。
「ソーマ、俺がやろう。ドラゴンブレス!」
「そんな攻撃、ききませんよ!」
ドーラが炎を吐いたが、ギリクに無効化されてしまった。
ドーラの攻撃でもダメなのか? 一体どうすれば……
「そうま君!」
俺は途方に暮れていた。
しかし、下の方からあの懐かしい声が聞こえた。
下を覗くと、ゆうひがこちらを向いている。
「ゆうひ、目が覚めたのか!」
「そうま君、早く逃げて! 殺されちゃうよ!」
「くくく……いい事を思いつきました」
ゆうひは必死に訴えていた。
それを見たギリクは、一度胸の前で手を叩く。
「彼女の目の前で、お前を殺すとしましょう」
「やめてーっ!」
ゆうひの悲鳴が聞こえたと思ったら、いきなり衝撃が来て俺たちは床に叩きつけられる。
「ぐっ……」
俺はドーラと引き離され、ゆうひの近くに転がった。
「お前を殺せば、彼女の心は簡単に壊れるでしょう」
床に降り立ったギリクは、歩いてドーラに近づく。
そして、倒れたその体を思いっきり踏みつけた。
「ぐあっ……」
「まずは、こいつから始末しましょう」
ギリクはドーラに手をかざし、消し去ろうとする。
「やめろーっ!」




