31 ギリクの狙い
ふとツクシを見ると、その場にへたりこんでいた。
「ツクシ、大丈夫か?!」
「へ……平気だよ。あの魔法を使うと、こんな感じになっちゃうんだよね」
ツクシは立ち上がったが、よろけて倒れそうになる。
「平気って、ヘロヘロじゃないか」
「「ははは……でも、その子を助けれてよかったね」」
「うぅ……」
「マイク、しっかりしろ!」
俺の腕の中にいて、気を失っていたマイクのまぶたが動き、そっと目が開く。
「えっ、お兄ちゃん? 僕、助かったの?」
「そうだぞ。君はもう自由なんだ」
「うっ……うわあぁーん!」
「えぇっ、マイク?!」
突然マイクが泣きだしたので、俺は慌ててしまう。
「あーあ、泣かしたにゃ」
「え、俺のせい?!」
シルフィにからかわれ、俺が慌てるのを見て、アルタさんとドーラは呆れていた。
ツクシは座りこんでいたけど、微笑ましそうに見ていた。
やがて、思いっきり泣いていたマイクは落ち着きを取り戻す。
「マイク、もう落ち着いたか?」
「うん。いきなり泣いてごめんなさい。もう大丈夫です」
「よかった。じゃぁ、このお兄さんたちと一緒に脱出してくれないか?」
「にゃ?! 何を言っているのにゃ!」
「ソーマはどうするんだ」
「俺はゆうひを迎えに行きます」
「1人じゃ危ないにゃ! あたしも一緒に……」
「シルフィはツクシについていてくれ」
シルフィは納得がいかない顔をしていたが、ツクシに寄り添ってくれた。
「ならせめて、ドーラだけでも連れていけ」
アルタさんが、人間の姿になったドーラの肩に手を置く。
「俺は構わない。ラージャ様からお前たちの事を頼まれているからな」
「わかった。ありがとう、ドーラ」
「ふんっ」
ドーラはお礼を言われて照れたのか、そっぽを向いてしまった。
俺が首を傾げていると、アルタさんが近づいてきた。
「ソーマ、魔王は一筋縄ではいかない相手だ。気を抜くなよ」
「ありがとうございます」
そして俺は、マイクに視線を合わせるようにしゃがんだ。
「マイク、君の力は誰かを守れるすごい力なんだ」
「そう、なのかな……」
「そうだよ。もし、魔物が出てきても、その力で皆を守ってくれ」
「うん、わかった。頑張るよ!」
「いい子だ、マイク。でも、本当に危ない時はお兄さんたちに頼るんだよ」
「うん!」
俺に頭を撫でられて、マイクはとてもうれしそうだ。
子どもの笑顔は、本当に癒されるなぁ。
「アルタさん、マイクたちの事よろしくお願いします」
「あぁ、わかっているよ」
「保護者としてですからね」
俺の冗談に、アルタさんは呆気にとられていた。
「じゃぁお兄ちゃん、頑張ってねーっ!」
マイクが出口の所で大きく手を振っていたので、俺も手を振り返す。
「さぁ、さっさと行くぞ」
「あぁ。この上に魔王・ギリクがいるんだな」
俺は上を見上げ、階段を上がっていく。
★★★
やっと階段を上がってきた俺は、ゆうひに会う事ができた。
だが、そのゆうひは、両手足を縛られはりつけにされていた。
「ゆうひ!」
俺が駆けつけようとすると、ギリクが立ちふさがる。
「よくここまで来ましたね。ほめてさしあげましょう」
「お前にほめられてもうれしくない! ゆうひを離せ!」
「それは出来ない相談ですね。くくく……」
ギリクは、意地の悪い笑みを浮かべる。
「彼女は私の新たな器になってもらうのですから」
「何を言っている?」
「わからないのも、無理ないでしょう」
そう言ってギリクは、胸に手を当てた。
「だって、この体はこの城の王のもので、私は意識を乗っ取っているのですから」
ギリクは話し始めたが、あごに手を当て首を傾げる。
「しかし、この体もそろそろ寿命ですし、新しい器がいるのですよ」
「そのために、ゆうひを利用するのか」
「そう、彼女は素晴らしい器です! 逃げだした時は焦りましたが、また戻って来てくれてうれしいですよ」
笑みを浮かべながら話すギリクに、俺は怒りを覚える。
「ふざけるな! ゆうひはお前になんて会いたくなかったんだぞ!」
「あぁ、そうでしょうね」
途端に笑顔が無くなったギリクは、俺に歩み寄ってくる。
俺は視線を外せずに、立ち尽くしていた。
そして、俺の前にギリクがやってくる。
「あなたにはお礼を言わなければいけませんね」
「お礼だと?」
やっとしぼりだした声は、多分震えていただろう。
それが伝わったのか、ギリクは口角を上げた。
「ありがとうございます。彼女を連れてきてくれて……」
その言葉は、俺を絶望させるには十分だった。




