30 今、解放してやるから!
「助けてよ、お兄ちゃん!」
マイクは泣きながら叫んでいた。
「マイク、今解放してやるからな!」
「くくく……お前にこの少年を助ける事は出来ませんよ」
俺がマイクに手を伸ばそうとした時、憎いあの声が響き渡る。
「ギリク……」
名前を呼んだのと同時に、マイクの背後に黒いモヤが現れ、ギリクの顔を形づくる。
「マイクから離れろ! アイス・ショット!」
俺は杖を振って氷を放つ。
しかし、モヤがゆがんで通り抜けてしまった。
「ソーマ、惑わされるな。あれは本体じゃない」
「もしかして、あれが呪いの正体ですか?」
「多分な。あれを消し去れば、少年を助ける事が出来るかもしれん」
「やってみます! ボン・エアー!」
俺はもう一度杖を振り、魔法を放ち爆発させた。
だが、すぐモヤが集まり元に戻ってしまう。
「そんな攻撃、ききませんよ」
顔だけのギリクは笑う。まるで、勝利を確信しているかのように。
「今度はこちらからいきますよ」
ギリクはそう言うと、その周りに黒い球が現れ、そこから黒い電撃が放たれる。
「危ない、ソーマ! リフレクション!」
ギリギリのところで、ツクシが呪文を唱えた。
俺の目の前に光の壁ができ、ギリクの電撃を反射させた。
「ぐわっ!」
あれ? はね返った攻撃はきいている?
なぜかギリク自身の攻撃は当たるみたいだ。
さっきまで余裕だったギリクの顔は、珍しく怒りの表情だった。
「おのれ……このままではすみませんよ」
すると、マイクのこうそくが解かれ、宙に浮いていく。
「待て、マイクをどうするつもりだ!」
「この子には、私の盾になってもらいます。この子も本望でしょう」
「そんな事あるか! ドーラ、あそこまで連れていってくれ」
「承知した。早く乗れ」
俺はドーラに飛び乗り、マイクの元に向かう。
「ここまで来ても無駄ですよ。あなたたちはこの子がいる限り、私に攻撃出来ないんですから」
「それなら!」
ドーラが近くまで行った瞬間、俺はドーラの背中を蹴った。
そして、マイクを抱きしめ下に落ちていく。
「マイクは返してもらうぞ!」
「くくく……お前ならそう来ると思いましたよ」
「なに?」
ギリクは俺の行動を予想していた?
落ちていく俺たちを、ドーラが受けとめてくれた。
ドーラは確認すると、素早くアルタさんたちの所に向かった。
「「ソーマ、ドーラ、早く戻ってこい!」」
「はははっ! お前たち全員、ここで始末してしまいましょう!」
ギリクは高笑いをしながら、さらに上へと昇っていく。
「一体、何をする気だ……」
もう遠くてギリクの顔は見えない。
しかし、嫌な予感がする。
ギリクの周りにモヤが集まり、天井いっぱいに黒雲を出現させた。
「あれはやばい気がする! ギガ・フレイム!」
俺は杖を振り、巨大な炎の玉を放った。
「だめだ、ソーマ! また、同じ過ちをするつもりか!」
「えっ……」
炎の玉を放つと同時に、黒雲からたくさんの雷が落ちてきた。
それらはぶつかり、一気に爆発をおこした。
「皆を守って! エイリチュアル!」
爆発の勢いは止まらず、俺たちを飲みこんでいった。
★★★
「あれ、俺たちなんともない?」
「よ、よかった、間に合って……」
幸いにも、ツクシの防御魔法が間に合って、全員無事だった。
「た、助かったー……」
「恐ろしい爆発だったにゃ。あれを食らったらひとたまりもないにゃ」
「そうだよなー。本当ツクシに感謝だよ」
すると、アルタさんからゲンコツをもらった。
「あいたっ! な、なにするんですか」
「うるさい。お前はまた、空の時と同じ事をしたんだぞ」
アルタさんが怒っているのがわかったので、俺は俯く。
「す、すみませんでした……」
「わかればいいんだ」
アルタさんは視線をそらし、魔物たちに目を向ける。
「あの魔物たちまで巻きこんで、俺たちを始末したかったんだろうな」
そこには、爆発に巻きこまれたであろう、ケルベロスや影たちが灰になって消えかかっていた。
自分の仲間まで犠牲にするなんて、許せない!
俺は魔物たちの残骸を見て、唇を噛みしめた。




