03 幼なじみとの再会
「ソーマ、お前のために見張りと護衛をしてくれる女性を連れてきたぞ」
「見張りと護衛ですか?」
「うむ。お前は魔法を使えるが、まだまだ未熟だ。だからこの方に色々教えてもらうといい」
「だんな様、私が教えられるのは剣ぐらいです。魔法はちょっと……」
「おぉ、そうなのか。なら、身を護るための術を教えてもらえないか」
「……わかりました」
女性は渋々了承した。けど、この女性どこか懐かしいような感じがする。
ジェフおじさんは、俺と女性を残して屋敷に戻っていった。
俺がじっと見つめていると、女性が近づいてくる。
「はじめまして。私はゆうひと申します。よろしくお願いします」
彼女は淡々と話しだした。ってあれ、ゆうひ?!
「ゆうひ、ゆうひなのか!」
「あの、いきなり呼び捨てはどうかと思いますけど……」
「俺だよ、そうまだよ! 葛城 そうま!」
「え、そうま君?」
「よかった、また会えて。一体どこで何をしていたんだよ!」
「……それは、そうま君には関係ない事だよ」
ゆうひは顔を背けた。俺は納得がいかなかったので、ゆうひに詰め寄る。
「関係ない訳ないだろ! 皆必死に探していたんだぞ。なんでこの世界に?」
「……」
ゆうひは黙ったままだった。これではらちがあかないと思い、俺はゆうひを連れて近くの町に行く事にした。
町ではいろんな物が売られていて目移りしてしまう。
「よし、大体買い物は終わったかな。あとは……」
俺が周りを見渡していると、体がぶつかってしまった。
「いってーな! どこ見てんだよ!」
「ご、ごめんなさい!」
「謝ったって許さねーぞ! ん? お前、いい物持っているじゃねぇか。それよこせよ」
「こ、これはさっき買った物です!」
「つべこべ言わずに渡せや!」
ガラの悪い男は俺に掴みかかってきた。
俺は強く目を閉じたが、痛みはこなかった。目を開けると、ゆうひが男の腕を掴んでいたのだ。
「何しやがる、女は引っこんでいろ!」
「出来ないわ。私はこの方の護衛をしているのだから」
「うるせーっ! おい、お前らやっちまえ!」
男が言うと、近くからまたガラの悪い男たちが出てきた。
「ゆうひ、逃げた方がいいんじゃ……」
「大丈夫よ。私に任せて」
ゆうひはそれだけ言うと、男たちに向かって走りだした。
男たちは剣を持っていたが、それよりも速くゆうひは剣を抜いていた。
ゆうひは素早い動きで男たちの剣をはじいていく。
「ひぃーっ! なんだこの女は!」
男たちはひるんだのかどんどん逃げていく。
しかし、俺にぶつかった男がゆうひの後ろにまわりこみ剣を振り上げた。
「ゆうひ、後ろだ!」
俺が叫ぶと、ゆうひが気づき、すぐ男が振り上げた剣をはじき飛ばした。
「ひぃっ! お、覚えてろよ!」
男は捨て台詞を吐いて逃げていった。
残された俺たちは周りの人たちから拍手をもらった。
「すごかったぞ、あんたら!」
「本当、お姉さん強いね」
「僕もかっこよかったよ!」
「あ、ありがとうございます。それでは、俺たちはこれで失礼します!」
俺は恥ずかしくなり、ゆうひを引っ張って急いで屋敷に帰った。
屋敷に帰った俺たちは、俺の部屋に入った。
「ふー。騒ぎになったけど、なんとか帰れてよかった」
「そうま君、さっきはありがとう。君が声をかけてくれなかったらわからなかった」
「それはいいよ。あいつも卑怯だよな」
「そうかもしれないけど、あれも1つの手だよ」
「そうかなー……」
俺と話しているゆうひは、ずっと無表情だった。
ここに来てからも一度も感情が表に出ていないような気がする。
俺と話していて楽しくないのかな。
俺はやっぱり気になったので、また俺の中にある疑問を聞いた。
「なぁ、ゆうひ。なんでお前がここにいるんだ?」
「それは、だんな様にやとわれたからで……」
「そうじゃなくて、なんでこの世界にいるんだ?」
「……」
やはり、ゆうひは黙っている。俯いた彼女からは感情が読み取れない。
「あの、話すのが嫌なら深くは聞かないよ。ゆうひだって辛いんだよな」
俺がゆうひの頭を撫でると、彼女は顔を上げた。
「変わらないね、そうま君。小さい時も私が泣いていると、いつも頭を撫でてくれたね」
「あ、ごめん! 嫌だったか?」
「ううん。すごく落ち着く……」
「それはよかった。じゃぁ、買い物もしたし、ご飯にするか」
俺がドアに向かうと、ゆうひが手を掴んできた。
「ゆうひ?」
「そうま君には、隠し事したくない。だから、聞いてほしい私の事……」
俺を見つめるゆうひの目は、どこか悲しそうな目をしていた。