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29 少年の叫び

 ギリクがいるであろう、最上階を目指すため、俺たちは階段を上がっていた。

「こう魔物が出てくると、城というよりダンジョンだな」

「にゃ? ダンジョンってなんだにゃ?」

 俺の呟きに、シルフィが反応した。

「あぁ、僕も気になって聞いたんだけど、教えてくれなかったんだよね」

「ほら、無駄口たたいていないで、さっさと行くぞ」

 ツクシも会話に入っていたら、アルタさんに怒られた。

 急いで上がっていると、光が見えてきた。

「あっ! 出口が見えてきたよ」

 階段が終わり光の方へ行くと、下と同じようなホールに出た。

「また広いホールに出たな」

「油断するなよ。さっきのように魔物が出てくるかもしれん」

「でも、そんな気配はないようだにゃ」

「ゆうひもいない……ここじゃないのか?」

 俺はゆうひを探して周りを見ていると、奥の方から誰かが歩いてくる。

 目を凝らして確認すると、それはよく知っている人物だった。

「あれ、マイク? なんでここにいるんだ。他の皆はどうした」

「……」

 マイクは黙ったまま動かない。

 そして、マイクの目はうつろだった。

 これは俺も知っている。ゆうひがなっていた時と同じだ。

「どうやら、ゆうひ殿と同じようになっているみたいだな」

「まさか、マイクにも呪いが?」

 すると、マイクの周りにあの黒い影たちと、ケルベロスなどの魔物が現れた。

「ソーマ、お前の予想は当たっているよ。魔物たちがあの子を襲っていないのがその証拠だ」

 マイクはうつろな目のまま、俺たちを指さす。

 それを合図に、一斉に影たちが向かってきた。

「うわぁっ! 一斉に向かってきたよ!」

「ツクシ殿、防御魔法を使うんだ!」

「は、はい! スクトーム!」

 ツクシが呪文を唱えると、巨大な盾が現れ攻撃を防いだ。

「こいつらは、あたしに任せるにゃ!」

 シルフィは勢いよく飛びだし、影たちに拳や足技を繰り出す。

 どんどん影は消えるが、床からそれ以上に出現してくる。

「にゃっ?! こいつら、どんどん出てくるにゃ!」

「これじゃキリが無いよ!」

「グオォーッ!」

 すると、ケルベロスが雄たけびを上げて突進してきた。

「お前の相手は、この俺だ!」

 ケルベロスを止めるため、ドーラはドラゴンの姿に戻り応戦する。

「ドラゴンブレス!」

 ドーラは巨大な炎の玉を、ケルベロスに向かって放った。

「ガアァーッ!」

「ドーラ、マイクには当てないでくれよ!」

「難しい注文だな。魔物たちを操っているのはあのガキだぞ」

「そうかもしれないけど……」

 俺が振り向くと、マイクの口がゆっくりと開いた。

「ふっ飛べーっ!」

 その言葉に反応するように、俺たちの体は宙に浮いた。

 そして、何かにはじかれるように後ろへと飛ばされる。

「えっ? うわぁっ!」

 幸い、ドーラが後ろにまわりこみ、全員壁にぶつかる事はなかった。

「ドーラ、ありがとう」

「油断するな。それより、あのガキは一体何者なんだ」

「あの子も、ギリクの呪いにかかっているんだよ」

「あの少年をなんとかしないと、こちらは不利になるばかりだ」

「なら、あたしとドーラが気を引くにゃ。その間に少年の口をふさぐにゃ」

「よし、ドーラとシルフィ殿は影とケルベロスの相手をしてくれ」

 ドーラとシルフィは頷き、敵の方へ走りだす。

 そして、アルタさんはツクシの肩に手を置く。

「ツクシ殿は、少年のこうそくだ」

「わかりました!」

「アルタさん……」

「ソーマは、あの少年への呼びかけだ」

「え?」

 俺が驚いていると、アルタさんはマイクを指さす。

「あの少年の心は、まだ闇に染まっていないはずだ。だから、お前の呼びかけで目を覚まさせてほしい」

 アルタさんはツクシから離れ、俺の前に立つ。

「やれるか?」

「やってみます。もうあの子の嫌がる事はさせません!」

「わかった、期待しているぞ」

 俺たちは頷き、マイクたちに向き直る。

「マイク! もうこんな事はやめるんだ! 君も嫌だろ?」

「……」

 やはり返事が無い。意識も奪われているのか。

 俺の呼びかけには答えず、こちらに指をさして影たちが向かってくる。

「しまった、また影たちが!」

 俺が杖を取り出す前に、アルタさんが剣で斬っていった。

「ソーマは呼びかけに集中!ツクシ殿、こうそく魔法を!」

「は、はい! かの者を捕えよ、ルナ・カデナ!」

 ツクシが呪文を唱えると、光の鎖がマイクを絡めとる。

「マイク、こんな事もうやめよう。君の力は誰かを守るためにあるんだから!」

「……ちゃん」

 マイクは俯いていたが、何かをしゃべっているのがわかった。

 そしてその声は震えていた。

「マイク?」

 ふとマイクが顔を上げた。その目には涙があふれていた。

「お兄ちゃん、助けて! もうこんな事嫌だよ!」

 それは紛れもなく、マイクの心の叫びだった。


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