28 俺がもっと早く駆けつけていれば……
ここからは、俺がアルタさんから聞いた話である。
俺が穴に落ちた後、ゆうひがその場にへたりこむ。
「嘘つき……いなくならないって、言ったじゃない……」
ゆうひは涙を流しながら呟いた。
それを見たアルタさんは、ゆうひの肩に手を置く。
「ゆうひ殿、今は悲しんでいる状況じゃない。早くソーマを見つけないと」
「わかっています……」
ゆうひが涙をぬぐい、立ち上がった瞬間、その背後にギリクが現れた。
「ここまで、ご苦労様でした」
「なっ、魔王!?」
すると、ゆうひの口を手でふさぎ、動きを封じる。
「んんーっ!」
必死に抵抗するゆうひだが、その耳元でギリクが囁く。
「あきらめなさい。お前が護っていた彼はもうこの世にはいないのですよ」
そう言われたゆうひは、静かに涙を流し抵抗をやめた。
それを確認したギリクは、笑いながらアルタさんたちに視線を向ける。
「くくく……彼女はもらっていきますね」
「お前、ゆうひを置いていくにゃ!」
シルフィが駆けだし殴りにかかったが、難なくギリクに避けられてしまう。
「にゃっ!」
「残念。私が欲しいのは彼女だけですよ」
「待て、魔王!」
ガイナが槍でつこうとしたが、ギリクの周りに黒いモヤがかかり2人を飲みこんで消える。
「あなたたちには、私の可愛い作品たちの相手をしてもらいましょう……」
すると、アルタさんたちの周りに、魔物や首の無い兵士らしきものが何体も現れる。
「魔物は俺が蹴散らそう」
ドーラはドラゴンの姿に戻り、戦闘態勢に入った。
アルタさんたちも応戦するが、数は減らない。
「くっ、これでは前に進めない」
「数が多すぎます!」
「しかも、首の無いのまでいるんだけど、あれは何?」
ツクシの問いに、アルタさんは苦笑する。
「嫌な予想は大抵当たるものだな。あれは人間だ」
「に、人間?!」
「しかも、規則性が無いから、何かに操られているんだろう」
アルタさんは説明していたが、魔物の攻撃がメアリに襲いかかる。
「きゃっ!」
「メアリ!」
ガイナはとっさに庇ったが、魔物の攻撃が直撃する。
「ぐぁっ!」
「ガイナ様!」
そして、戦っている最中に、俺が戻ってきたという事である。
「じゃぁゆうひは、ギリクに連れ去られたという事ですね」
「あぁ、すまない。俺たちがついていながら……」
「大丈夫です。ギリクの目的がゆうひなら、まだゆうひは無事なはずです」
俺は焦っていた。ゆうひを早く取り戻さないと、と思い進もうとした。
しかし、ガイナに寄り添っていたメアリに呼び止められる。
「ソーマ様、ガイナ様を手当てする時間を下さい!」
「わかった。なら、この子たちと一緒に外に避難していてくれないか」
「えっ、あたしたちまだやれるよ!」
クランはちょっとご機嫌ナナメになり、頬を膨らませる。
それを見た俺は、彼女たちに視線を合わせるようにしゃがんだ。
「君たちはよく手伝ってくれたよ。後はあのお兄さんたちを守ってくれないか?」
「……わかった。お兄さんも無理しないでね」
「ありがとう、大丈夫だよ。さぁ、早く行きな」
クランたちは一応納得したようで、ガイナたちの所にかけ寄った。
「アルタ様……」
「ガイナ、ここまでよくやってくれた。後はゆっくり休むといい」
「……申し訳ございません」
ガイナはボロボロの体をメアリに支えてもらいながら、頭を下げた。
本当に申し訳なさそうである。
メアリたちと子どもたちを見送った俺は俯く。
もう少し、俺が早く駆けつけていれば……
俺が悩んでいると、人間の姿に戻ったドーラが近づいてきた。
「ドーラ、どうしたんだ?」
「お前にこれを渡しておこうと思ってな」
ドーラが差し出したのは、ピンポン球くらいの小さな球だった。
「これは、なんだ?」
「これはラージャ様から預かった物だ。何かの役に立つかもしれない」
「わかった、もらっておくよ」
俺は球を受け取り、ホールの先を見つめる。
「待ってろよ、ゆうひ。必ず、助けてやるからな……」




