26 分断
俺たちは城までの道を歩いていたが、違和感は消えない。
「なんだか、ここ不気味だよ……」
「外がもう夕暮れですから、そう感じるのかもしれませんね」
ツクシとメアリが話しているのを聞きながら、俺は辺りを確認する。
すると、違和感の正体がわかった。
「そうか! ここお城なのに、兵士が1人もいないんだ」
「確かに妙だな」
アルタさんの方を見ると、あごに手を当てて考える仕草をしていた。
少し歩き、巨大な門の所まで来て周りを見ても、人の気配は無い。
「門番もいない。一体どうなっているんだ?」
俺が首を傾げていると、音を立てて自動的に門の扉が開いた。
「どうやら、入ってこいと言っているようだな」
確か、ラージャの時もこんな感じだったな。
ラージャの事を思いだしていたら、長い廊下が終わり、広いホールに出た。
「うわぁー、大きなホールだね!」
ツクシがはしゃいでいるのを見ていると、ゆうひが俺に近づく。
「そうま君、私から離れないでね」
「大丈夫だよ。まだ何も出てきていないし」
「油断は禁物よ。魔王は何をしてくるかわからないんだから」
「心配するなよ。俺はゆうひを残していなくなったりしないから」
「そうま君……」
俺は、ゆうひを安心させるために笑いかける。
ゆうひは心配そうに手を伸ばしてきた。その時である。
いきなり突き上げるような衝撃がおき、足元が揺れ始める。
「な、なんだ?! いきなり床が揺れて!」
揺れはどんどん激しさを増し、床には地割れが出来ていた。
その地割れは、なぜか俺の所にだけ出来始める。
「なっ?! なんで俺の所だけ地割れがすごいんだ!」
まるで、俺の所だけに集中しているようだ。
やがて大きな穴となり、俺はそこに飲みこまれそうになる。
「うわぁーっ!」
「ソーマ!」
「ソーマ様!」
「そうま君!」
近くにいたゆうひが手を伸ばしたが、掴む事はなく俺は下へと落下する。
俺がその時最後に見たのは、ゆうひの絶望した顔だった。
★★★
「うぅ……ここは、どこだ……」
どれくらい気を失っていたんだ?
俺が目を開けると、子どもの顔がすごい近くにあった。
「うわあぁっ!」
「ひゃぁっ!」
子どもは俺の声に驚いて飛びのいた。いや、俺も驚いたけどね。
「あれ、でもなんで俺、無傷なの?」
「それは、あっちにいるクランが風を使って受けとめたからだよ」
子どもの指さした方を見ると、茶髪のツインテールの少女がいた。
多分、あの子がクランなのだろう。
「そっか、ありがとうー! 助かったよ!」
俺はクランにわかるように手を振った。
すると、そのクランがかけ寄ってきた。
「あっ、お兄さん起きたんだね。皆ー、お兄さんが目を覚ましたよー!」
少女の呼びかけに、散らばっていた子たちが集まってくる。
「えっ、子どもがいっぱい? まさか、全員転移させられたのか?」
「そうだよ。ここにいる子は戦力として選ばれた子たちなの」
「でも、びっくりしたよ。いきなり天井が開いたと思ったら、お兄さんが落ちてくるんだもの」
クランが天井を指さす。
そこには、四角い穴が開いていた。
そうか、俺はあの天井から落ちてきたのか。
という事は、ここは地下なのか?
俺は考えたが、ふと仲間の事を思いだした。
「はっ! それよりも、早く皆の所に戻らないと!」
俺は立ち上がったが、服のすそを引っ張られる。
確認すると、淡い金髪のくせ毛のある少年が掴んでいた。
「無駄だよ。魔王にバレたらただじゃ済まないと思う」
「僕らも何度も逃げようとしたけど、ダメだった」
「魔王は怖いもの」
「逆らったらダメなんだよ」
他の子たちも、それぞれ不安がったり怖がったりしている。
「皆、あきらめちゃだめだ!」
俺は皆の不安を取り除くように言った。
そして、拳と手の平を胸の前で合わせる。
「安心しろ。俺はその魔王を倒しに来たんだ。あと、そいつをぶん殴ってやるんだ」
ずっとすそを持っていた少年が、不思議そうに見上げてくる。
「お兄さん、そんな事出来るの?」
「どうせ、できっこないよ」
少年の問いかけに応えたのは俺ではなく、遠くにいた別の黒髪で短髪の少年だった。
「いいや、やってみせるね! そして、お前たちも自由にしてあげるから」
「本当! やったーっ!」
俺の言葉に希望を見出したのか、子どもたちは喜んではしゃいでいる。
子どもたちの笑顔を見て、俺はほっとする。
「だから、それには皆の協力が必要なんだ。手伝ってくれるかな」
「あたし、やる!」
「僕もお手伝いします……」
「ふんっ。あんただけだと不安だからな。俺も行ってやるよ」
手を上げてくれたのは、クランと金髪の少年と、遠くにいた少年だった。
「ありがとう!」
「あたしはクラン。こっちのくせ毛で大人しそうなのがマイクで、お兄さんにきついのがたくやだよ」
「俺はそうまだよ。じゃぁ、3人ともよろしくな!」
仲間の元に戻るため、俺は3人の子どもたちを連れて地下からの脱出を試みた。




