24 魔王・ギリク、出現
領主様から教えてもらった海路で行ったら、魔物に出会う事もなく順調に船は進んでいた。
「ふー、このまま何事もなく、アイーダ国に着いてくれればいいんだけど」
俺が気持ちよく風に当たっていると、横でツクシがぐったりしていた。
「うぅ……気持ち悪い……」
「ツクシ、だらしないにゃ。そんなんじゃ、あたしの夫になれないにゃ」
「ツクシ様は、どうにも乗り物に弱いようですね」
シルフィとメアリに背中をさすってもらいながらも、ツクシの顔色は悪かった。
「ツクシ殿は、部屋に行って休んでいなさい」
「そ、そうします……」
アルタさんに促されて、ツクシはシルフィに支えてもらいながら中に入っていく。
「じゃぁ俺も、」中に入っているよ。皆、自由にしてていいから
「そうま君、私も一緒に行くわ」
俺とゆうひは部屋まで続く廊下を歩いていた。
「でも、順調に事が進んでて、」逆に不安になるよ
「大丈夫よ。何があっても、私がそうま君を守るから」
「ありがとう、心強いな。あ、ツクシは大丈夫かな」
酔っていたツクシの事が気になったので、たくさんある部屋の1つをノックした。
部屋から出てきたのはシルフィだった。
「んにゃ? ソーマ、どうしたにゃ」
「さっきのツクシの様子が気になったから見に来たんだよ」
「それなら、中に入って確認したらいいにゃ」
シルフィに言われて中に入ると、ツクシがベッドに横になっていた。
「ツクシー、大丈夫か?」
俺が呼びかけても返事がない。相当きついらしい。
「見てわからないかにゃ。ダメに決まっているにゃ」
「あー、だいぶ酔っているな」
シルフィは呆れ、俺は優しくツクシのお腹を叩く。
ふと気づくと、近くの椅子に腰かけていたゆうひが俯いている。
「どうした、ゆうひ?」
「ソーマ、そいつから離れるにゃ!」
「シルフィ、何言って……」
俺が近づこうとすると、シルフィが間に入った。
シルフィはなぜか戦闘態勢に入っていたので、俺は戸惑った。
すると、ゆうひの体から黒いモヤが現れ、背後に顔のようなものを形づくる。
「やぁ、はじめまして。このような形での挨拶、失礼します」
ゆうひの口は動いて声も発していたが、それはゆうひのものとは違った。
丁寧な口調だが、その声色には威圧感がある。
「なっ、誰だお前は! ゆうひじゃないな」
「私はギリク。お前が探している魔王ですよ」
えっ、こいつがゆうひを転移させた魔王なのか? でも、なんでゆうひの体から出てきたんだ。
「えっ、お前はゆうひの中にいるのか?」
俺が首を傾げていると、ギリクは顔を横に振った。
「いいえ、違いますよ。しかし、この女の視覚からあなたたちの行動をずっと見ていました」
「なっ、それならこっちの情報が流れているって事か!」
俺は自分の血の気が引いているのがわかった。
なら、俺たちがアイーダ国に向かっているのもわかっているんじゃ……
俺が俯いていると、ドアが開いた。
「ソーマ、アイーダ国についてからの行動を話したいのだが……」
入ってきたのは、アルタさんだった。
「なっ! ゆうひ殿?! いや、ゆうひ殿ではないな」
アルタさんは一瞬驚いたが、すぐに状況を把握したようだ。
「アルタさん、あれは魔王・ギリクです」
「あぁ、ゆうひ殿を転移させた奴だな」
「はははっ。そこまで知っているのですか」
俺たちの会話に、ギリクは高笑いをする。
「何を笑っている!」
俺は腹が立って、ギリクを睨みつけた。
そしてギリクを指さし、俺は言い放った。
「よく聞け、ギリク。俺は1回お前を殴らないと気がすまないんだ!」
「私を殴る? 面白い事を言う坊やですね」
確か、ラージャにも同じ事を言われたような。
俺の発言に、ギリクは口角を上げる。
「いいでしょう。どうぞいらっしゃい。我がアイーダ国で待っていますよ……」
ギリクは言い終わると、黒いモヤになり消えていった。
さっきまで横になっていたツクシが起き上がり瞬きをする。
「い、今のは夢だったの?」
「ツクシ、夢じゃないよ。アルタさん、俺たちの行動は全てゆうひの視覚からバレていたようです」
「そうか……そうなると、俺たちは敵陣のど真ん中に行く事になるな」
「それでも、俺はあいつを許せない!」
「気持ちはわかるが、今は冷静になるんだ」
「すみません……」
アルタさんに言われて、俺は俯き拳を握りしめる。
すると、ゆうひは意識が戻ったのか、周りを見回していた。
「皆、どうしたの……私、また何かしていたの?」
ゆうひがとても怯えていたので、俺はゆうひの手を握った。
「ゆうひは何も悪くないよ。悪いのは魔王・ギリクなんだから」
「あの男がここに来たの? どこにいるの、私が倒して……」
ゆうひは椅子から立ち上がり、すぐ剣を抜いたが、アルタさんに止められた。
「待ちなさい、ゆうひ殿。君を使って、魔王がこちらの行動を把握しているようなんだ」
「どういう事ですか?」
ゆうひは、まだ知らないのだ。自分が原因である事に。




