21 決闘開始!
次の日、俺たちがコロシアムに向かうと、シルフィが仁王立ちをして待っていた。
「ようやく来たかにゃ。逃げなかった事、ほめてやるにゃ」
うわー、この子、勝つ気満々だよ……
俺が苦笑いを浮かべていると、シルフィが近づいてきた。
「ソーマ、昨日はよく眠れたかにゃ?」
「シルフィのせいで、色々大変だったよ」
「それはよかったにゃ。じゃぁ、中に案内するにゃ」
中に入ると、大勢の観客が入っていた。すごい歓声である。
「「すごい……いっぱい人が入っているね」」
「町の人、全員来ているんじゃないか?」
「じゃぁソーマはこっちに来るにゃ」
「え、俺どこに連れていかれるの?」
「ソーマは景品だからにゃ。とてもいい場所に座ってもらうにゃ」
「景品?!」
驚く俺の腕を取り、シルフィは全体が見渡せる少し高い場所に案内した。
「さぁ、ここに座ってくれにゃ。そして、リボンをこうかけて……」
「おいおい! なんでそんなリボンまでするんだよ!」
「景品にリボンは必要だにゃ。文句言わずに巻かれるにゃ」
あっという間にリボンを巻かれた俺は、ぐったりして横になっている。
アルタさんたちは俺の横に案内されていた。
アルタさんは、また微笑ましそうに俺を見ていた。
「ソーマ、なんか可愛らしくなったじゃないか」
「アルタさん、もういっそ滑稽だと笑って下さい……」
俺は半ばあきらめたように言っていると、中央にゆうひとシルフィが現れた。
お互い向き合って立っている。
「これから決闘を始めるが、ルールを説明するにゃ」
「ルール?」
「ルールは簡単。どちらかが相手に一撃くらわすか、倒せばいいにゃ」
すると、シルフィが右手を上げて、指をパチンと鳴らした。
「だけど、ただ戦うだけじゃつまらないから、少し制限をつけさせてもらうにゃ」
シルフィの指が鳴ったのと同時に円形の端が動き、穴が出現する。
俺が覗くと、下には無数の針がびっしりと並んでいた。
「その穴に落ちれば、無数の針が己を貫くにゃ。せいぜい落ちないように気を付けるんだにゃ」
シルフィが腕を組んで、ゆうひを挑発する。
「では、両者位置について下さい」
やがて、審判である者が出てきた。
見た目はダチョウのようで、目がギョロッと動いている。
審判に言われて、2人とも指定の位置に立った。
「ゆうひ、大丈夫かな……」
「ゆうひ殿は剣が強い。それはソーマが1番わかっているんじゃないか?」
「そうですけど、シルフィの能力もわからないので心配です」
俺の心配をよそに、審判が片手を上げる。
「では、決闘始め!」
審判が手を下ろすと、シルフィが勢いよく駆けだした。
「先手必勝!」
「くっ……」
シルフィの防具をつけた拳が、ゆうひの剣に当たり少し吹き飛ばされる。
しかし、ゆうひは体制を整え、すぐに剣を構え走りだした。
「はあぁっ!」
「遅いにゃ!」
シルフィは軽々と避け、空中で体制を変えまた拳で殴りにかかる。
「どうやら、シルフィ殿は肉弾戦が得意なようだな」
「アルタさん、なに冷静に分析しているんですか!」
俺は冷静ではいられなかった。
ゆうひの攻撃は、シルフィに何度も避けられて当たっていない。
「攻撃しても、何度も避けられてしまう……なら、間合いをつめるのみ!」
ゆうひは足に力をこめ、シルフィとの距離をつめる。
「はあぁっ!」
「ふふっ、なかなかやるにゃ。そうこなくっちゃ面白くないにゃ!」
シルフィは笑っていた。本当にこの決闘を楽しんでいる。
「なんで戦っているのに、笑っているんだよ……」
「それは、私の教育がそうさせてしまったのです」
俺がシルフィにショックを受けていると、誰かから話しかけられた。
振り向くと、仙人のようにひげを生やした高齢の男性が立っていた。
よく見ると、その獣人にも猫耳としっぽがあった。
「あなたは?」
「私はここの領主であり、シルフィの父親です」
「りょ、領主様?! なんでそんな方が俺たちの所に……」
「実は、昨日あの子が言ってきたんです。面白い奴らが来たと」
それって、俺たちの事かな。
「あの子には、小さい頃から鍛練をさせてきました」
「そうだ! 確か自分は戦士だと言っていました」
「はい。このような小さな島は、いつどこの国から攻められてもおかしくありません」
シルフィの父親は、静かに語りだした。
「だから強くなるように、教育をしてきましたが、あの子の中で、戦いは楽しいものだと認識してしまったようです」
「そんな……」
俺は、まだ戦っている2人に目を向けた。




