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君の笑顔を取り戻すために、転生した俺は魔王を倒しに行くと決めた!  作者: しゅうらい
第2章 目指すは、海の向こうのアイーダ国
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20 決闘前夜

 しばらく歩いていると、コロシアムが見えてきた。

 けっこう古い建物らしく、所々にひびが入っている。

「このコロシアムは、誰でもエントリーが出来るんだにゃ。決闘は明日。それまで少年とひと時を過ごすといいにゃ」

「あなたには、絶対負けないから」

「いい目をしているにゃ。明日が楽しみだにゃ」

 それから俺たちはエントリーを済ませ、シルフィが案内してくれた宿に泊まった。

「じゃぁ少年。明日楽しみにしてるにゃ」

「その少年ってやめてくれよ。俺はそうまって言うんだ」

「ならソーマ。明日はあたしを応援してくれにゃ!」

「それは、さすがに無理があると思うんだけど……」

「冗談だにゃ。ソーマの応援が無くても、あたしは負けないからにゃ」

 シルフィはそう言って、また俺に抱きつき頬を寄せてきた。

「し、シルフィ! 皆が見てるから!」

「ふふっ。せいぜい気まずくなるといいにゃ」

 シルフィは、いたずらな笑みを浮かべながら帰っていった。

 残された俺は、皆の方を振り向く事が出来なかった。

 というより、ゆうひの顔を見る事が出来なかった。

「そうま君、早く中に入ろう」

「う、うん……」

 俺は少し気まずかったので、ゆうひの顔を見ずに返事をする。

 すると、ゆうひがぽつりと呟いた。

「それにしても、ずい分さっきの子と仲が良かったね」

「そ、それは、シルフィがじゃれてくるだけだよ!」

「何を焦っているの?」

「ゆうひが変な事言うからだろ」

 俺とゆうひが言い合いを始めたので、ツクシが気になって駆け寄ってきた。

「ソーマとゆうひさん、なんでケンカしてるの?」

「ケンカじゃねーよ!」

「そう。そうま君が勝手に怒っているだけ」

「怒っているのは、ゆうひの方だろ」

「私は怒ってなんかいないわ。気のせいじゃない?」

「いいや。俺がシルフィにじゃれられている時、ゆうひ雰囲気が怖かったもん」

「……」

 うっ、無言の圧力だ。目が怖い。

 俺は無表情のゆうひにおされて、1歩下がる。

「まぁまぁ、お2人とも言い合いをなさらず。部屋に行って休みましょう」

 メアリ、ナイス! 俺は気まずい空気から抜けだしたくて、足早に部屋に向かった。

「……なんで男たち5人が同じ部屋なんだよ」

 そうなのだ。さすがに5人にもなると部屋が狭い。

「文句を言うなら、お前にかまっていた子に頼めばいいだろう」

「もうシルフィの事は忘れて下さい」

「いやー、見ていて面白かったからつい、な」

「アルタさん、性格悪いですね」

「おい、アルタ様の悪口は許さんぞ」

 ガイナが鋭い目つきで睨んできたので、俺は顔を引きつらせる。

 その光景が面白かったのか、アルタさんは口に手を当てて笑いをこらえていた。

「ガイナ、そう睨むなよ。ソーマが怖がっているじゃないか」

「お、俺ちょっと外の空気吸ってきます!」

 俺は、その場から逃げるように部屋を出た。

「はぁー……なんとかあの場所から逃げ出せたけど、ゆうひと言い合いしちゃったからどうしよう……」

 肩を落とした俺の耳に聞こえてきたのは、女性たちの話し声だった。

 なんだ? 部屋から話し声が聞こえてきている?

 俺はそっとドアに近づき耳を当てる。

「ゆうひ様、ソーマ様の事で悩んでいらっしゃるのですか?」

「メアリさん……私、そうま君にあんな風に言うつもりなかったんです」

「それはシルフィ様の事ですね」

「はい。彼女がそうま君にじゃれているだけなのはわかるのに、心の中がモヤモヤするんです」

「それは、ソーマ様に好意を抱いているからではないですか?」

「好意、ですか? 確かに私たちは幼なじみで大切ですけど、それ以上の感情はないですよ」

「それは、まだあなたが気づいていないだけです。きっとわかりますよ」

「そうなんでしょうか……」

 ふと足音がドアの近くまで聞こえたと思ったら、いきなりドアが開いた。

 俺はその拍子に倒れてしまい、慌てて正座になる。

 顔を上げれば、無表情のゆうひと目が合った。

「こんな盗み聞きする男に、そんな感情はないと思います」

「ゆ、ゆうひ……これには訳があって……」

「ソーマ様、盗み聞きはいけませんよ!」

「メアリ違うんだ! 誤解しないでくれ!」

「……問答無用」

 その時、俺の左頬にゆうひが平手打ちをした。興味本位で聞くんじゃなかった。

「た、ただいま戻りました……」

「わぁっ! ソーマ、どうしたのその頬の手形は」

「聞かないでくれると有り難いんだけど……」

「ほぅ。さては、女性陣の部屋でも覗きに行ったか?」

「アルタさん、これ以上誤解をうまないで下さい!」

 俺は内心泣きながら、急いでベッドに潜りこんだ。

 誰かが俺の背中を叩いてくれているのがわかったので、多分ツクシかドーラだろう。

 俺は、少し落ち着いて眠りにつく事ができた。


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