19 俺のために争わないでくれ!
シルフィに町を案内してもらっていると、向こうから数人がこちらに歩いてきた。
「あぁん? 道の真ん中をぞろぞろ歩きやがって、誰に許可とって歩いてんだよ」
歩いてきたのは、ガラの悪い男たちだった。
獣耳は生えているが、見た目は俺やツクシにからんできた奴らと似ているな。
「道を歩くのに、許可なんていらないにゃ。お前たちこそ、そこをどくにゃ!」
「なんだと、この猫娘!」
「やるかにゃ?」
シルフィはとてもやる気だ。相手の奴らも戦闘態勢に入っている。
「どこにでもいるのね、ガラの悪い奴って……」
「あの男たち、ゆうひ様が退治した奴らにそっくりですね」
「ひぃーっ! けっこう人数いるけど、あの子大丈夫かな……」
「まぁ、ここのケンカだから、俺たちが口出しする必要もないだろう」
「でも、アルタ様。1人、人の話を聞かないのがいらっしゃいますよ……」
「おい、お前ら! 女の子に寄ってたかって、恥ずかしくないのかよ!」
俺は見ていられず、男たちとシルフィの間に入った。
「ソーマ、何をしている! こいつらの事に首を突っこまなくてもいいだろう」
「アルタさん、もう遅いみたいですよ」
振り返ると、珍しくアルタさんが慌てていたが、こんな状況ほっとける訳がない。
「なんだ? お前。口出しするなら容赦しねぇぞ!」
男たちは俺に突っかかってくる。
どうする……雷や炎は周りに被害が出るし、あと使える魔法は……
俺は必死に考える。そして、ある魔法を思いだした。
「アイス・ショット!」
俺は杖を上に向けて、呪文を唱える。
すると、ピンポン玉くらいの氷が、男たちにバラバラと降りかかる。
「ぎゃぁっ! いきなり上から氷が落ちてきやがった!」
「まだするって言うなら、もっとすごい魔法をおみまいするぞ」
「く、くそっ、覚えていろよ!」
男たちは、捨て台詞を吐きながら急いで逃げていった。
「ふー、なんとか追い払う事ができたよ」
「すごいにゃ、少年。そんな魔法も使えたのかにゃ」
「出来るだけ周りを巻きこみたくなかったからね」
「その気遣いは有り難いにゃ。しかも、氷はビーストランドでは貴重なんだにゃ」
「そうなのか?」
「そうだにゃ。お前、私と結婚してここで暮らせばいいにゃ。そして、いっぱい氷を提供するにゃ」
「はい?!」
この子は、よく考えてものを言う事はないのか!
俺が呆気に取られていると、シルフィが腕を絡ませてくる。
「俺が結婚?! シルフィ、何言って……」
「そうにゃ。あたしはここの領主の娘だし、自分で言うのもなんだが、けっこう可愛いと思うんだがにゃ」
さっき可愛いって言われるの、嫌がってなかったっけ。
どうやら、自分で言うのはいいらしい。
「どうかにゃ? 迷う必要はないと思うんだがにゃ」
「いやいや、俺まだ15だし、俺には目的があるんだよ!」
「目的かにゃ? そんなの、あたしがなんとかしてやるにゃ」
「こらこら、勝手に話を進めるな」
シルフィがすり寄ってきたので、俺が戸惑っていると、アルタさんがこちらに近づいてきた。
「アルタさん、助けて!」
「シルフィ殿、ソーマはアイーダ国に用があるので、あなたに構っている場合ではないんだが」
「なら、あたしと勝負するにゃ」
「勝負?」
「そうにゃ。ここビーストランドでは、物事の解決は決闘で決める事になっているんだにゃ」
シルフィは俺の腕を離し、アルタさんたちに説明をする。
「もし、あたしに勝てたら、この少年はあんたたちが連れていくといいにゃ。だが、あたしが勝てば、少年はあたしと」結婚するにゃ」
「わかった、いいだろう」
ちょっと待て。俺の意見はどうなるんだよ!
俺が慌てているのを無視して、話を進めるアルタさんたち。
すると、ゆうひが話に加わった。
「なら、戦うのは私がやります」
「ゆうひ殿、君が行かなくても、ドーラに任せようと思ったんだが……」
「いいえ。ここは私がやります。私はそうま君の護衛だから」
「人間の小娘に、あたしの相手がつとまるかにゃ?」
「……そうま君は渡さない」
あれ、ゆうひ……なんか怒ってる?
ゆうひとシルフィは睨み合っている。
なんだか、2人の間に、火花が飛んでいるような気がした。
「だったら案内はここまでにして、今から決闘場所に向かうにゃ」
「一体、どこに行くんだよ」
「コロシアムだにゃ」
「コロシアム?! ゆうひ、やっぱりやめた方がいいって!」
「大丈夫よ、そうま君。私は負けないから」
ゆうひは表情を変えなかったが、やっぱり怒っている気がする。
これは、幼なじみとしての勘だけどね。
「そう言ってられるのも今のうちだにゃ」
シルフィもやる気に満ちていた。
俺をかけて、女同士の戦いが今始まろうとしている。




