17 空の旅は危険がいっぱい
「あー、風が気持ちいいなー」
「そうま君、なにのんきな事言っているの」
「だって、これまで忙しかったからこんなのんびりできる事なかったじゃんか」
俺たちは魔物の森から飛び立ち、今はドラゴンの背に乗り空の旅を楽しんでいる。
「だからって、気を抜いていたらダメだよ」
「そうだぞ、ソーマ。どこから襲撃されるかわからんからな」
どうやら、楽しんでいるのは俺だけらしい。
「大丈夫だって。空にいるんだから、襲われる事ないでしょ」
「この少年は、楽観的だな」
「ドラゴンにそこまで言われるんかい。というか、ドラゴンじゃ呼びにくいから名前つけていい?」
「……俺たち魔物に名など必要ない」
「そんな事言わずに。そうだな……ドーラってどう?」
「……なんだか安易な気もするが」
「気のせいだよ」
「ギャァッ、ギャァッ!」
「ん? なんか今ギャァギャァ聞こえたんだけど……」
俺は嫌な予感がした。こういう時、大抵当たるものだ。
「全員、しっかり掴まっていろ!」
ドーラが速度を上げ始めたので、俺たちは振り落とされないようにしがみついた。
すると、向こうからけっこうな数の鳥が確認できた。
「あれは、鳥?」
それは、だんだんと近づいてきた。
「で、でかっ! なんだ、この鳥は!」
姿を現したのは、巨大なワシのモンスターだった。その中には、女性の顔をした鳥もいる。
「あれは、サンダーバードとハーピーだな。ここは奴らの領域なんだ」
「それじゃぁ、俺たちが縄張りに入ったから襲ってきたんですか?」
「多分、そうだろうな」
「だったら、俺が魔法で蹴散らしますよ!」
「そうま君、無茶はダメだよ」
「大丈夫、任せろって! ドーラはそのまま突っ切ってくれ」
「了解した!」
俺は、振り落とされないようにゆっくりと立ち上がり、杖を構えた。
「ギャァーッ!」
サンダーバードは叫びながら、翼を羽ばたかせ、雷をおこした。
「ひーっ! これじゃ突破できないよ!」
「心配するな、ツクシ! 相手を焼き尽くせ、ギガ・フレイム!」
俺が杖を振ると、巨大な炎の玉が出現し、勢いよく放たれた。
「待て! 雷に炎なんか当てたら……」
「え?」
アルタさんは何故か止めようとしたが、それは間に合わなかった。
炎の玉は確かにモンスターに当たったが、雷にも触れていたので、大爆発した。
「うわあぁっ!」
爆風はこちらにも来て、俺は踏ん張りがきかず吹き飛ばされた。
「ソーマ、掴まって!」
「ツクシ!」
ツクシがなんとか手を伸ばしてくれたが、あと少しのところで届かなかった。
「うわああぁぁっ!」
俺は落下する。皆がどんどん小さくなるのがわかる。
あぁ……俺はこのまま海に落ちて死ぬのか。それか、奴らのエサになるのか。どっちでもいいけど、短い人生だった……
俺は何もかもあきらめて目を閉じた。
「そうま君……」
すると、急にゆうひの顔が浮かんだ。
そうだ、こんな所で死ぬ訳にはいかない! だって俺は、ゆうひの笑顔を取り戻すんだから!
俺はぐっと杖を握りしめ、呪文を唱えようとした時、わき腹に衝撃が走った。
「ぐえっ?!」
「なんだ? 変な物が落ちてきたと思ったら、人間かにゃ」
俺は頭に猫耳が生え、そしてしっぽも生えた少女に抱えられていた。
「君は?」
「あたしはシルフィ。とりあえず下に降りるかにゃ」
シルフィと言った少女に抱えられたまま、俺たちはすぐ近くの島に着地した。
「この島に来れば、あいつらはやってこないにゃ」
「あの、助けてくれてありがとう。おかげで命拾いしたよ」
「にゃ? あたしは別に助けたつもりはないにゃ」
シルフィは、きょとんとした顔で首を傾げた。
「あたしはただ、落ちてきた物をキャッチしただけにゃ。それがお前だっただけ」
「そ、そうなのか……はっ! そうだ、俺の仲間がまだ空にいるんだよ!」
俺は皆の事を思いだして慌てたが、シルフィは空を指さす。
「それは、あれかにゃ?」
シルフィの指さした方を見ると、こちらに飛んでくるものが見えた。




