16 和解と情報
「ゆうひ?! 一体何をするんだよ!」
「何って、魔王は倒さないといけない。大丈夫、ツクシ君が縛ってくれているから、一撃で終わらせる」
ゆうひが剣を振り上げたので、俺は急いでラージャとゆうひの間に入った。
「……そこをどいて、そうま君」
「待ってくれ、ゆうひ! こいつは魔王なんだ。他の奴らの事も知っているかもしれないだろ」
「そうだな。すぐ殺してしまうのは得策ではないと思うぞ」
「アルタさん……」
アルタさんが助けぶねを出してくれたので、ため息をつきながらゆうひは剣をしまった。
「おい、人間。なぜわしを庇ったんだ」
「俺は、あんたから話を聞きたいんだ」
「話だと?」
ラージャは獣の姿から、また人の姿に戻った。
その際に光の鎖は、力を失い消えてしまう。
「わしに話とはなんだ?」
「あんた、魔王なんだろ? なら、他の魔王の事も知っているんじゃないのか?」
「あぁ、知っているよ」
「教えてほしい人物がいる。ゆうひはある魔王にこの世界に転移させられたんだ。そいつは海の向こうの国にいるらしいんだが、わかるか?」
俺の問いに、ラージャはあごに手を当て、考える仕草をした。
「ソーマ、その事についてだが、俺たちにも詳しく話してくれないか」
俺はゆうひがこの世界に転移させられた経緯を全員に説明した。
「なるほど。ゆうひ殿が魔物を引き付けてしまうのは、その魔王が逃がさないようにしているのか、または他に目的があるのかもしれんな」
「ラージャ、何か思いだしたか?」
「あぁ。海の向こうなら、そこにいるのは魔王・ギリクだな」
「魔王・ギリク?」
「そうさ。そいつはとんだ変わり者でね。いろんな研究をしていると聞いた事があるな」
「じゃぁ、そいつがゆうひを転移させた張本人か!」
「なんだ、ギリクに用があるのか?」
「俺はそいつをぶん殴りにいくんだ!」
ラージャは一瞬驚いた顔をしたが、また高笑いをした。
「はははっ! お前は面白い奴だな」
「え、面白い?」
全員を見たら、皆頷いていた。いや、納得しないでよ。
「滅多にいないぞ、魔王を殴りにいく奴は。命は惜しいものな」
ラージャは立ち上がり、指をパチンと鳴らした。
「わしは一緒に行けんし、お前たちだけでは頼りないから、こいつを連れていけ」
指を鳴らしてすぐに現れたのは、赤い巨大なドラゴンだった。
「げっ、またドラゴン?!」
「心配するな。こいつはわしに仕えている者で、聞きわけがいいんだ」
「そ、そうなのか?」
ラージャは、ドラゴンに近づき手をかざした。
すると、ドラゴンの姿は変わり、人の姿になった。
外見は、赤い髪の長髪で、切れ長のオレンジ色の瞳をしていた。背も高くて、ガイナといい勝負だ。
「それでは、こいつらを頼むぞ」
「お任せ下さい、ラージャ様」
「すごく有難いんだけど、ここ行き止まりじゃないか。海に出るには、どうしたらいいんだ?」
「あぁ、それならこの入り口を使うといい」
ラージャが岩に手をかざすと、岩が動き抜け道が現れた。
「まさかの抜け道?!」
「さぁ、早く行くといい。ギリクによろしくな」
「俺、そいつを殴りにいくんだけど……」
「ははっ、そうだったな。じゃぁ、思いっきり殴り飛ばしてやれ」
「もちろん! あ、それと森の入り口に馬があると思うんだけど、世話頼んでいいかな」
「……別に構わんが、わしの力で町の近くまでワープは出来るぞ」
「え、そうなの? なら、海の向こうの国まで頼むよ」
「無理を言うな。そっちはわしの支配から外れるから無理じゃ」
「なんだよー。期待したじゃんか」
「……お前、ラージャ様に無礼だぞ」
ドラゴンに睨まれたので、俺は苦笑いした。なんかガイナが2人増えた気がする。
ラージャに見送られて、俺たちは抜け道を進んでいた。
しばらくすると、光が差しこんできたので出口が近い事がわかった。
「や、やっと出口か」
「けっこう歩いたね……」
「2人とも、少しは体力つけた方がいいよ」
「なんか、さっきも言われた気がするな……」
ゆうひは呆れたのか、ため息をついて俺とツクシの前を歩く。
外に出ると、まだ森の中だったが、少し向こうに海が見えた。
「ふー、やっと海だよ」
「ここからアイーダ国まで距離があるからな。ドラゴンならひとっとびじゃないか?」
「俺はラージャ様に言われてついてきただけで、お前たちに指図される筋合いはない」
ドラゴンは淡々としゃべって、そっぽを向いてしまった。
「じゃぁ仕方ない。そのラージャ様に言って従ってもらうしかないな」
「……ラージャ様に何かしたら、ただじゃおかないぞ」
ドラゴンとアルタさんが睨み合っていたので、俺はすぐに間に入った。
「ラージャには言わないから、アイーダ国までは連れていってくれないか?」
「……仕方ない。なぜラージャ様はこんな奴らに肩入れを……」
ドラゴンは文句を言っていたが、元の姿に戻り、背中に俺たちを乗せてくれた。




