13 魔物の森
「今日はもう遅いし、ここで野宿して出発は明日にしようか」
俺は疲れたのであくびをした。すると、ガイナががれきの山から布団を取り出した。
「一応、女性はこれを使ってくれ」
「まぁ! ありがとうございます。ゆうひ様、有難く使わせてもらいましょう」
「そうま君も一緒に使わない?」
「えっ?!」
ゆうひのとんでもない誘いに、俺は内心喜びと驚きでいっぱいだった。
だが、後ろを振り返ると、アルタさんは口を手で押さえ、また笑っている。ツクシとガイナの目はとても冷たかった。
「な、なに言ってるんだよゆうひ! 俺はこっちで寝るから大丈夫!」
「そう? 子どもの頃はよく一緒に寝ていたのに」
やめてくれ! 皆の目が怖いんだってば。ゆうひわざとだろ!
なんとか女性陣と寝る事は避けられたが、男たちの空気が重い気がする。
「あのー……ゆうひが言っていたのは冗談ですからね?」
「俺は最初からわかっていたぞ」
「アルタさん、なら止めて下さいよ!」
「いやぁ、面白くて、つい」
「でも、ゆうひさんは冗談言っている感じじゃなかった気がするなー」
「ツクシ、それは気のせいだ!」
ツクシ、絶対何か誤解している。なんとか話をそらさなくては。
俺は救いを求めるように、アルタさんに話しかけた。
「そういえばアルタさん、魔物の森ってどれくらい行けばあるんですか?」
「そうだな……馬をとばしても2日はかかるな」
「2日ですか……」
「まぁ、近くまで行くのにそれくらいだから、後は森まで歩きだな」
「けっこう遠くにあるんですね」
「魔物と人間は共存しないからな。絶妙な距離感が必要なんだ」
「へぇー……」
俺は頷きながら、話を聞いていた。
次の日の朝、俺たちは朝食を終えて馬を調達するためもう一度ベルグールに向かった。
幸い、馬はすぐに調達できた。すぐにベルグールを離れ、魔物のいる森へと向かう。
「しかし……なぜこの組み合わせに……」
そうなのだ。馬は3頭調達できたのだが、馬を扱える者が限られていた。
馬を扱えるのはゆうひ、アルタさん、ガイナの3人。
俺はゆうひ、アルタさんはツクシ、ガイナはメアリと乗っていた。
「なぁゆうひ、メアリと一緒の方がよかったんじゃないのか?」
「何を言っているの。私はそうま君の護衛なんだから」
「そうでしたねー。でも、ゆうひが馬に乗れるなんてびっくりだよ」
「……無理やり訓練させられたから」
「あ、ごめん……嫌な事思い出させたよな」
「大丈夫。それよりそうま君、ちゃんと掴まっていないと落ちるよ」
「お、おぅ」
そうは言ってもゆうひさん、お腹に手を回している事で、俺の心臓バクバクなんですけど!
俺が内心焦っているのがわかったのか、アルタさんは笑いをこらえながら話しかけてきた。
「ソーマ、落ちたらちゃんと拾ってやるから、安心しなさい」
「なんか、面白がっていませんか!」
「ふふっ。そんな事ないよ」
「やっぱり面白がってるーっ!」
「こら、そうま君。暴れないで」
「す、すみません……」
怒られてしまった。くそー、アルタさんめ。
「なんだか後ろは楽しそうですね」
「まったく、緊張感が足りないな……」
俺たちは、途中休憩をはさみながら、2日かけて魔物のいる森に着いた。
「馬は森の外につないでおこう。魔物のエサになってしまうからな」
「わかりました。じゃぁ今からは徒歩ですね」
俺が森に入ろうとすると、ガイナから肩を掴まれた。
「ガイナ、さん?」
「……ここは俺が先頭を歩こう」
ガイナに睨まれたので、俺はそそくさと後ろに下がった。
ガイナが先頭を歩き、俺たちは森の中を歩いていた。
「アルタさん、ガイナさんはなんであんなに怖いんですか?」
俺はガイナに聞こえないように、小声でアルタさんに話しかける。
「そうか? あいつは元々あんな顔だぞ」
「顔というか、目つきが……」
「まぁ、あいつもあまりしゃべらないからな。根はいい奴なんだが」
アルタさんと話していると、急にガイナが振り返った。
「……全部聞こえていますよ、アルタ様」
「聞こえるように言ったんだよ」
「お2人とも、仲がよろしいんですね」
メアリが微笑みながら言ったので、ガイナはため息をついた。
「手のかかる主人を持つと、気持ちがわかりますよ」
ガイナはそれだけ言うと、また前を歩きだした。
もしかして、ガイナは誤解されやすい性格なのかも。
「それにしても、魔物の気配が全然ないわね」
ゆうひは辺りを見渡しながら言った。
「まだ、森の入り口だからじゃないか?」
「というより、動物の鳴き声も聞こえないんだけど……」
ツクシが怯えながら俺にくっついてきた。
「おいツクシ、ひっつくなよ。歩きづらいじゃないか」
「だって怖いんだもん! この森、暗いしなんか不気味だよ!」
確かに何の気配もしないのはおかしい。もしかすると……
「俺たち、もう魔物に囲まれているんじゃ……」




