【短編】さかさま
私と幼馴染の啓悟は、なんでも逆さまだ。
「好きなペットは?」
そう聞かれたら、私は犬派で、啓悟は猫派。
「好きな料理は、和食? 洋食?」
そう聞かれたら、私は和食で、啓悟は洋食。
お互いに好きなものがいつも真逆で、お互いに笑い合いながら、なんでだよって話をする。
好きなものがダブらないから当然、取り合いになることもない。
それで平和に過ごせてるから、好みの違いに関しては何とも思わない。
私は啓悟のことが好きだけど、啓悟はきっと別の女の子を好きになるんだろうな。
でもそれは仕方ないことだから、とっくに啓悟への想いは秘密にしておこうって決めてるんだ。
仮に何かの間違いで結ばれたとしても、共通のものが何もない。
食の好みが違うと、すぐに別れてしまう……なんて話を聞いたことがある。
だからきっと、私と啓悟はこれからもずっと「幼馴染の親友」のままなんだろう。
「大地ー! 啓悟君が迎えに来てるから、早く下りて来て学校行ってらっしゃい!」
あ、お母さんが呼んでる。
早く準備しなくちゃ、またお母さんに愚痴を言われちゃう。
「全く……、あんたももう高校生なんだから。啓悟君みたいにもっと男らしくしなさい!」
私はとっくに諦めてる。
私が男の娘だから、啓悟への想いは一生しまっておくんだ。
でも……、きっとそれでいい。
一生のお嫁さんは無理だけど、一生の親友でいることは出来るから……。
「お待たせ、啓悟」
読んでくださり、ありがとうございます。