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川沿いの街 リブサイド

「見えてきましたね」


その言葉が自然と出てくる。

小さな丘を登り切った私たちの前には、小さくない川。それから、その川のすぐそばにある街が見えてきた。その街こそ、私たちのまず目指すと決めた街、リブサイドだ。


「……大丈夫?」

「はひ、……。だいじょう、ぶです」


はぁはぁと息を切らせながら、スカイさんがやっとのことで息を整える。これで、ここまで旅をしてきたというのだから、不思議で仕方ない。


「んぐ……。よし、あともうひと踏ん張りですね」

「ほんとに大丈夫ポル?」


手に持った筒から水を呷るようにして口にし、一息ついた後、その足を再び前に進め始める。その前向きさには、少し感心もしたのだが。


「あ……」


体が付いて行かなかったのか、下り坂へと踏み出した足を滑らせ、そのまま下まで流れていったのは別の話。

まぁ、下るのが楽だった、と言えばそうなのだけど……。

何とも言えない気持ちを吐き出すように、ため息を一つ。私もその後を追うのだった。



そんな、ちょっとしたアクシデントがありながらも坂を下り終え、リブサイドまでもう少し、と言ったところで。


「あれ? あれってなんでしょう?」


スカイさんが指さす先には、リブサイド。そして、その街の少し手前に見える、人だかりだった。

確かに、街に入るには検問などもあるだろうけど、ここまで混んでいるのは珍しい。


「ま、とりあえず並んでおきましょうか」


かといってその検問を無視することも、ここで街を素通りして歩き続けらることも、私たちにはできない。

結果、スカイさんの口にした通り、私たちもその列におとなしく加わる。


「……こそこそ」

「……ねぇ、あれって」

「しっ、聞こえるぞ」


途端、最後尾の人が気づいたのをきっかけに、いくつかの視線を集めてしまう。もう慣れたものとはいえ、やっぱり気分は良くない。

そういえば、この人は一緒にいて大丈夫なのだろうか、と少し隣に立つはずのスカイさんに目を向ける。

……が。


「あのー、これってなんか原因があったりするんですか?」


向けられた視線をどう思ったのか、目の前の人に向かっていく姿が見えた。

どうやら心配も何もないらしい。


「え!? いや、えーと」


まさか話しかけてくるとは思っていなかったのか、話しかけられた側は一瞬驚くも、スカイさんの肩にはポポルがいる。

それをちらっと確認すると、なんとか事情を話してくれた。



ここリブサイドの街は川沿いにある。そのおかげか、交通の要として発展してきた。

当然、日に何便も船が行きかうことで、街そのものも潤ってきたのだが、最近になって船のいくつかが座礁。

しかも街の目の前で詰まった結果、交通としての機能が麻痺。陸路での交通も、これまでなかったわけではないものの、どうしても制度として劣る。

そのため、街へ入るには時間がかかってしまう、というのが現状だった。


「これはまた……随分悪いタイミングでしたね」


その事を教えてくれた、前にいる旅人らしき人には少しばかりの硬貨を手渡し、困った、と宣うスカイさん。

その表情は、決してそんなことを思っている風には見えないけれど……。


「街に入ったら起こすポル」


そういってポポルも胸元にあるポケットへともぐりこんでしまう。

私たちはそういうことができるわけでもなく、その後しばらくの時間をかけて、ようやく目の前の人の検問が終わったのだった。

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