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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
91/99

Final ──決勝──

 続けてレインボー・アイリーンも飛び込む。しかしカール・カイサは抜けず、すかさずインを閉められてしまった。

 実況と解説は順位の変動を興奮気味に伝え、コスプレコンビはディスプレイに向かい歓声を上げた。

 連続S字区間を抜け、その次の、そのまた次の最終コーナーを抜け。フィチがトップで13周目に入る。

 チャットも盛り上がった。アレクサンドラも伴侶の順位アップに喜びショーンを膝に歓声を上げた。ショーンは何事かとやや驚いているが、アレクサンドラの表情を見て、つられるように笑顔になった。

「いいわよフィチ、ぶっちぎってやりなさいッ!」

「了解!」

(あれは、抜かせたんだ)

 抜いてすぐ、ヴァイオレットガールがわざと隙を作ってフィチとレインボー・アイリーンを先に行かせたと気付いた。

 彼女にしてはあまりにも甘いライン取りだった。

 しかし、それならせっかくのチャンスを生かしてやると、フィチは俄然気合が入った。

「策士策に溺れるだ」

 追うのは簡単だが、追われながらトップを維持するのは難しい。精神的な厳しさを感じたヴァイオレットガールは、ひと休みの意味も込めてトップを一時的に譲ったのだろう。

 もちろんしくじればライバルにチャンスを譲る諸刃の剣の作戦だ。

「おッ」

 龍一が接戦状態の5位と6位に追いついて、ソキョンの笑みに輝きと深みが増す。ファーステストラップをたたき出してから、好調を維持している。

「Faster Fastest」

 より速く、一番速く。ソキョンはぽそっとつぶやいた。

「なんてこった、このオレがトップ争いにしがみつくのが精一杯だなんて!」

 リアルのレースでは優勝経験もあるカール・カイサだったが。このシムレーシングのeスポーツのレースではトップ4の4番手が精一杯だ。

 ついに順位に変動があり、フィチとレインボー・アイリーンはヴァイオレットガールを抜いたが、自分は抜けなかった。

 フィチもまたいいペースで飛ばし、後続もいい感じでついてゆく。カール・カイサも置いていかれはしないは、かといって抜く機会をうかがいつつ、抜けずじまいだった。

「だけど、いい、すごくいい! これだ、このヒリヒリ感。これでこそレースだ。ゲームだからって馬鹿にできない、それがいい、すごくいい!」

 心身の奥底から言い知れぬ歓喜が湧き上がり、思わずベートーベンの第9を歌いたくなるような衝動に駆られる。

「彼ら彼女らは、ゲーマーでもあり、レーサーでもある。レーサーとしてレーサーと戦える、これ以上の喜びがあるか!」

 今はいかせてやる。だけど、フィニッシュまでにはトップに立つ!

 決意を固め、虎視眈々と走る。

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