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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
9/99

Battle against myself ―自分との戦い―

「はあー」

 忸怩たる思いから気が抜けて、ポーズボタンを押して、やむなくひと休みする。こんな時に無理にプレイしても、いいことはない。

 シムリグから離れて、冷蔵庫の中の缶コーヒーで喉を潤し、冷やす。

「ふう」

 コーヒーを喉に流し込んで、ひとまずは落ち着いた。

 気晴らしに外に出てもいいが、コロナ禍だ。用心して外出は控えている。缶コーヒーをひと箱まとめ買いして、何本かを冷蔵庫に入れてあった。

 時計を見た。まだ午前10時半だ。

 ロンドンとの時差は9時間。ニューヨークとの時差は13時間。

 スマホを取り出し、SNSを覗いてみる。なんの投稿もない。ヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンは好んでゲームライブ配信をよくしていて、龍一も時々見ていたが。今はしていないようだ。

 ちなみに龍一はSNSは、短文と画像、短い動画を投稿出来るシンプルなものしかアカウントを持っていない上に非公開にして、ほぼ使用されず、情報収集のためのSNS使用といった趣きだった。

 SNSは確かに便利だけど、自分を出すことが必要とは思えなかったというか、あんまり表に出たいという気持ちがなかった。だから非公開にしていた。

 さすがにフィチとは相互フォローをしているが。アカウント名はゲームとは違うUdonSobaSomenという、違うハンドルネームなので、ヴァイオレットガールもレインボー・アイリーンも龍一にフォローをされているのを知らないだろう。

「まあしかし、しかしまあ……」

 ヴァイオレットガールのアイコンは、プロフィールのプロシムレーサーの肩書通り、所属するチームのヴァイオレットカラーのシャツに身を包み、愛嬌たっぷりの笑顔で腕を組んでアスリート然としている。レインボー・アイリーンのアイコンは、伴侶と幼い我が子を挟んでほっぺにちゅーをしているもので。SNSの投稿内容を見なければシムレーサーとは思えないものだった。

 ちなみに伴侶はアレクサンドラ・ルオ(羅)さんという、黒髪も艶やかな中国系アメリカ人女性だった。

 闊達さや愛情がスマホから溢れ出て龍一を包み込みそうで。なにやら照れくさくなってきて、画面をフェードアウトさせた。

 シムリグに戻って、身を預けて。

「少し休んでから、またやるか」

 と、シートにもたれて腕を組みながら、目を閉じ。そのまま寝息を立てていた。

 時は過ぎ。フィチは買い物を終えて、よく手を消毒し、卵を母親に渡した。

「ありがとう」

「いえいえ」

 母の感謝の言葉に笑顔で頷き。二階の自室に戻って。PCとディスプレイの電源を入れた。

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