表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
88/99

Final ──決勝──

(ドラゴンは残念だが)

 予選の調子が悪く10番手からのスタートでは。トップ争いはこの4台に絞られてきそうだ。

 ふうー。

 と、ヴァイオレットガールは息を吐きだす。

「OK。ついてこれるかな?」

 いたずらっぽく微笑む。

「まーしかし、今からチェッカーが恋しいわ」

 ソキョンはぽそっとつぶやく。このままの順位で終わってくれれば、チームとしては挑戦成功である。が、しかし。

「なんて、言うわけないでしょ。フィチ、ヴァイオレットガールには勝てそう?」

 などと、ストレートに尋ねるものだった。

「はい、いけそうです。どこかで抜く機会もあるでしょう」

「そう。期待してるわよ」

「勝利給、弾んでくださいよ」

「まあ、生意気言っちゃって」

 不意なおかしみを覚えて、スタッフたちは笑みを見せる。優佳も笑みを見せたが、龍一が気になる。

 9位に順位を上げたが、前を抜きあぐねているようだ。最終コーナーを曲がっているさなかだ。

「なにしてんの! ちゃちゃっといっちゃいなさい!」

 ソキョンは容赦なく叱咤し、優佳が訳す。

「は、はい!」

 と返事するや、龍一は前に張り付き、スリップストリームを生かして並び、そのまま前に出て順位を上げた。抜かれたレーサーは左腕を跳ね上げる仕草を見せ、悔しさを表現する。

「大丈夫、彼なら私の叱咤に耐えられるわ。ヤワなやつじゃないからオファーしたんだし」

 優佳の目が気になってか、ソキョンはそんな言い訳じみたことを言い。それもおかしみを禁じえずに、スタッフたちは笑みを見せた。

 まあでも確かに、叱咤されてすぐに順位を上げた。

「ヴァイオレットガールちゃんがペースを落としてくれたら、ありがたいんだけどねえ……」

「さすがにそれは虫が良すぎると思いますよ」

「思うだけならただよ」

 そんなやりとりがかわされる。その間も、トップ4は順位の変動なくレースを引っ張ってゆく。

 レースは45周、そのうちの7周が終わろうとする。トップ4は膠着状態で、ヴァイオレットガールを先頭に様子見の機会伺い。

 龍一は1台抜いて7位にまで順位を上げた。そんな彼は言った。

「ソキョンさん、思ったことをそのまま言ってください」

「じゃ遠慮なく……。勝つつもりでレースをしてください! でなきゃ許さないわよ!」

 優佳の通訳を通じてそんなやり取りが交わされたのだった。ソキョンのハッパかけは思った以上に気持ちを引き締めた。

「ゲームだから楽しもうなんて思っちゃだめよ、プロとして勝ちに餓えるのよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ