表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
85/99

Final ──決勝──

 龍一はそれからはるか後ろの10番手グリッドからのスタートだ。

「遠いなあ……」

 ポールポジションのヴァイオレットガールのマシンが遠くに感じる。それだけ昨日の自分は、しょぼい走りをしてしまっていたのだ。グリッドに着いてそれを改めて感じた。

 この様子はライブ配信されている。

 龍一の両親もフィチの両親も、あのコスプレコンビも、アレクサンドラとショーンも、世界中のゲームファンが動画配信サイトにアクセスして、このレースを観ている。

 スタートへのカウントが始まる。

 シグナルと同時に数字が表示されてゆき……。

 GO!

 の表示。

 全車一斉にスタートした。突き抜けるようなモーターが響き渡る。

 45週の決勝、ファイナルレースがスタートした!

 ポールポジションのヴァイオレットガールはスタートダッシュに成功し、トップで第1コーナーに入ってゆき、それにスパイラル・Kことフィチ、カール・カイサ、レインボー・アイリーンと続く。

 それからさらに後続のマシンが駆け抜けてゆく。

 司会と解説も嬉々として声の仕事をこなす。チャットも盛り上がる。コスプレコンビも声を上げて実況を楽しむ。

 龍一は、下がりもしなかったが上がることもなく、10番手のままスタートした。

(始まった……!)

 身体が震えそうだ。それを必死に抑えて、前に着いてゆく。先頭が遠い。

(やっぱり予選とは違う!)

 嵐の中、難易度100%ベリーハードのAIカーを相手に死闘を繰り広げたが。それとは段違いの緊張と、張り詰めた雰囲気。

 会場の雰囲気に吞まれそうだった。

 ヴァーチャルなはずの、ディスプレイのマシン一台一台が、血の通った生き物で、さらには獣で、自分に襲い掛かってきそうだった。 

 突き抜けるモーター音は、獣の咆哮を思わせた。

 シムリグを自身をリンクさせ、マシンを走らせるが。自分のゼッケン2のマシンすら何かの拍子に裏切りそうな、そんな弱気に襲われる。

(ダメだダメだ!)

「焦らないでください。まずステディな走りを心掛けてください」

 ヘッドセット越しにソキョンの声と、それを訳す優佳の声がする。

 ステディ、安定させろということだ。

「りょ、了解……」

 とだけ応えるのが精一杯だ。でも確かにその通りだ。どんな不甲斐ない走りでも、最低限完走せねば。完走を最低限の義務と自分に言い聞かせる。

 そのまま1週目が終わる。先頭はヴァイオレットガールのまま。2番手争いが激しい。フィチのすぐ後ろに着けるカール・カイサのすぐ後ろに着けるレインボー・アイリーン。

 追突しそうなほど接近し、隙を伺う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ