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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
84/99

Final ──決勝──

「さ、サンクス……」

 たどたどしくも、それくらいは言えて。肘タッチをする。

(友達か……)

 もしかしたら、ライバルと言いたかったのかもしれないが、そこで咄嗟に出た言葉がトモダチだったことに、龍一は、心の中で清水が沁みるようなものを覚えるのだった。

「You are my tomodachi!」

「thank you my friend!」

 やっと英語が出て。ヴァイオレットガールも安心してか、普通にフレンドと言った。

(友達か……)

 朝会った時、ヴァイオレットガールは何も言わなかったのではなく、言えなかったくらいのことは分かったが。それでも、何かしらの言葉を掛けたくて、こうして改めて声を掛けてくれた。

 ライバルでもあり、友達でもあり。

 そうこうするうちに、オープニングセレモニーの時間がやってきた。

 スタッフは専用スペースで、選手はシムリグのそばに立って。

 ふと、龍一はヴァイオレットガールの方を見た。とともに、レインボー・アイリーンも視界に入る。

「……」 

 場内が暗くなる。司会が大会の始まりを告げる。音楽が流れてきて、徐々に場内が明るくなてくる。

 この様子はもちろん動画配信サイトにてライブ配信されている。

 シムリグのそばの選手の何人か、ヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンに、龍一とフィチ、カール・カイサ、あのバリバリタトゥーのレッドヘアの選手や他数名が、跪いていた。

 世の中には様々な理不尽がある。差別もまた一向になくなる様子はなく。それに対しての抗議の意を示すため、試合のオープニングセレモニーで勇気を振り絞って膝をついて、抗議の意を示すアスリートは多い。

 それに倣い、ヴァイオレットガールたちも、この大会のオープニングセレモニーで膝をつく姿勢を見せたのだ。

 ……オープニングセレモニーが終わる。

 選手たちはシムリグに身を預ける。ヘッドセットを身に着け、ハンドルを握り、ディスプレイをまっすぐ見据える。

 龍一は大きく息を吐きだす。

 世界大会だ。世界一を競い合うのだ。ディオゲネスのワールドレコードを競っていた時はアマチュアだったのが、今は……。

 なんという人生の変化だろうか。

 場内は静寂に包まれる。嵐の前の静けさのように。

 ディスプレイはピット内で、クルーはコースを指さし、ゆけ! と指示をする。

 それから画面がフェードアウトして、フェードインして明るくなれば。スターティンググリッドに着けていた。

 ポールポジションはヴァイオレットガール、2番手グリッドにはカール・カイサ、3番手グリッドにはレインボー・アイリーン、4番手グリッドにはフィチ。

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