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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
83/99

Final ──決勝──

 もちろん、スタッフが慌てて飛んできて諫めるのだが。

 龍一は思わずギクッとしてしまった。遠い異国の地で、日本人は自分と優佳だけ。チームで来ていなければ、途方に暮れるばかりだったろう。

「すいません、ちょっと、お手洗いに……」

 と、スペースを離れた。済ませるものを済ませて、戻る途中、ヴァイオレットガールと会った。

 龍一を見て、手を振るのを見て、手を振り返した。と思えば、こっちに近付いてくる。

「Are you OK?」

 ゆっくりと、そう話しかけてくる。そのおかげで何を言ってるのかはわかった。英語が苦手でもそれくらいはわかった。

「あ、ああ。うん……」

 咄嗟に英語が出ず、もごもご何を言ってるのか自分でもわからなかった。

(って、心配してくれてる?)

 アーユーオーケー? 大丈夫? ってことだ。平静を装っているが、お見通しのようだ。

  ヴァイオレットガールも、咄嗟の日本語が出ず、言葉に詰まった感じだった。

(ど、どうしよう)

 龍一はややパニック状態になってしまった。改めて、フィチの通訳のありがたみを痛感した。

 他の人たちもいる中で、ふたり向き合っている状態だ。そのまま通り過ぎてゆくものの、

 あいつら何やってんだ? と不思議そうにこっちに目を向けられもした。

 ポールポジションを獲得し、優勝候補のヴァイオレットガールが、ドラゴンと無言で向き合っているのだ。

(ライバル心剝き出しで睨み合っているのか)

 と思う者もあったとしても不思議はない。

(ど、どうしよう)

 マスクをしているので口元が分からない。どうにか目を笑顔モードにしてはいるが、上手くいっているのかどうかわからない。

 これで、どうなるんだ? と不安が増してゆく。ヴァイオレットガールは自分に何を伝えたいんだろう。いや、心配してくれて、励まそうとしてくれてるのかもしれないが。

 言葉の壁を痛感しまくっていた。

 ふと、ヴァイオレットガールは目を見開き、言葉を発した。

「と、トモダチ、ガンバルッ!」

「What?」

 気が付けばヴァイオレットガールは肘を出していた。朝も肘タッチをするにはしたのだが。しかし変なところで英語で反応出来たものだが。

 まさか、トモダチ、ガンバル、と言われるなんて。

(トモダチ、友達か……)

 プロの試合でこんなフレンドシップでいいのだろうか。ある残虐系格闘ゲームで相手を殺さずにいたら、フレンドシップ! と言ってもらえるというのを、なぜか今ここで思い出してしまった。

 それはさておき。

 ヴァイオレットガールはずっと龍一を見つめている。照れくささを覚えるくらいだ。

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