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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
82/99

Final ──決勝──

 アリーナに近づくにつれ、マスクをした人がバスを覗き込むのが見られるようになった。

 アリーナ付近に来たeスポーツファンたちだった。本来なら観客も入れて試合が開催されるのだが、コロナ禍にあってやむなく無観客試合となって。ファンたちは、やむにやまれぬ気持から、スマホやタブレット片手に、アリーナ付近で場内の様子を思い浮かべて試合に接する。

 しかし警備員に退去するよう促される。幸い限度を超えたフーリガンまがいなファンはおらず、指示に従いアリーナから離れて、バラバラに散らばる。

 その様子を見て、龍一をはじめとするチームメンバーたちは心が痛むのを禁じ得なかった。

「この人たちのためにも、いいレースをしなきゃね」

 ソキョンが言い。フィチも頷く。優佳が訳して龍一に伝える。

 バスは会場に着き。メンバーはアリーナ入りして、用意されたスペースにゆき。まずミーティング。

 チームヴァイオレットもPRID-eも、カール・カイサのチームもスペースでミーティング。

 話の内容は、いかにして勝つか。試合内容もハイレベルになるほど、感性で勝つのは不可能になる。

 感性を、才能を最大限生かすために、何をどうすればよいのか。

 昨日の予選で不甲斐ない有様だった龍一は、気持ちを切り替える。

「勝ちに餓えるよの!」

 と、本来韓国語で言ったはずだがどうにも日本語で脳内再生されるソキョンの言葉を心の中で繰り返す。

 むっ、と。昨日心の中に湧いた悔しさが蘇る。

(オレは自惚れていた……)

 内心、自分でも気付かないうちに、舐めていた。まあなんとかなるだろう。最悪でも一桁順位は行けるだろう。

 甘かった。

 予選順位は10位。新人であることを考えればそれでもいいのだろうが? その前に、ワールドレコード5位の記録保持者である。それを思えば、新人だからと、言い訳はできない。

 なにせ自分の出したタイムにも遠くおよばず10位だったのだから。

 期待をされながらも振るわず消えるか、それとも……。

(切り換えられてないじゃん!)

 決勝レースは、アイスランド時間で13時、午後1時に行われる。それまでは自由時間。ミーティングや練習やリラックスなどなど……、自由に時間を使ってもよい。もちろん自己責任で。

 会場内は参加者やスタッフがそろってきて、いい雰囲気になってきた。

 コロナ禍であることから、マスクをつけ小声で話すことと決められ、大声を発するのは禁じられている。

 それでも、思わず声は出てしまうもの。参加者の中には、やる気が溢れすぎてつい大声になってしまう者も見受けられた。

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