Qualifying ──予選──
下手をすれば龍一もその仲間入りをしてしまうのか。
「龍一さんは社会性もある貴重な人材だから、なるべくならいてほしいのよねえ……」
テクさえあれば何をしてもいいと思っている勘違い野郎もまた多い。どのチームも、もちろんソキョンたちもそんな選手には苦労させられた経験はある。幸い龍一は真面目で、その点に関しては心配なかった。しかしそこはやはりプロチームなので……。
ともあれ、龍一は振るわない。1回目15位だったのが、2回目の今では10位なのだから、上がったと言えば上がった。しかし、二桁順位で終わればいかに新人であろうと許してはいけない成績だ。
そもそも龍一は一時はワールドレコードホルダーだったのだから、なおさらだ。
自分の出したタイムにも遠く及ばないとは、どうだろうか。
「ゴーストがないからですか?」
優佳ははっとして、ヘッドセット越しに尋ねてみる。
「……。かもしれません」
「ああ、やっぱり。目に見える目標がないと調子が出ないって、ありますよねえ」
「だからと言って、明日の本戦でなんとかしますは、ダメですよ」
「……。はい」
龍一は忸怩たる思いでいっぱいだった。
「まあ、ここから経験を積み重ねてくれれば」
スタッフの一人が助け舟を出すように言う。
新人だから多くは求めない、というのはソキョン以下ウィングタイガーのスタッフ同士で話し合ったことだった。
まずはトップタイムから110%以上引き離されないようにして、本戦も完走すれば御の字、と。
ワールドレコード上位者にはかえって失礼なくらいゆるいかもしれないと思ったが、そうせざるをえないか。
「さあ、ポールポジション争いは、ヴァイオレットガール、カール・カイサ、レインボー・アイリーン、スパイラル・Kに絞られてきました!」
時間は刻々と進む。2回目の予選も半分を過ぎた。
司会は4人の名を口にしたが、本来ならドラゴンこと龍一もいないといけないところだった。
「おや、そういえばワールドレコード5位のドラゴンは現在10位ですね。ちょっと調子が悪いかな」
「今大会ではワールドレコード上位5位の選手によるバトルが期待されていましたが。ドラゴンが抜けてしまうんでしょうか?」
「さすがにそれは何とも言えません。予選で調子が悪くても決勝で盛り返す選手もいますし」
「でも調子を取り戻したとしても10位スタートでは勝てる見込みはほぼありません」
「タイム表で上位に入ったとき、彼はまだアマチュアでした。プロとしてeスポーツの試合に出るのは今大会が初めてという新人です」
「緊張してるんでしょうね。痛いほどわかります」




