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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
74/99

Qualifying ──予選──

 まさか2回目の予選でも様子見で調整する馬鹿はいない。みんな初っ端から飛ばす。甲高いモーター音がディオゲネスの美麗なCGの青空すら突き抜けるほどに響き渡る。

 燃料エンジンほどではないにしても、マシンの声は心を突く。電動モーターの音は鋭いので、まさに前から後ろへと心を突きそうな印象があった。

 そして1位はヴァイオレットガール。2位は、カール・カイサ。フィチは3位だ。

 まだ始まったばかりでどうなるかわからないが、シムレーシングでのキャリアが浅いカール・カイサが2位につけヴァイオレットガールを追う展開に、配信視聴者たちは沸いた。

「フィチ、精一杯?」

「ぶっちゃけいっぱいいっぱいですよ」

「そ、そう……」

 そんなやりとりがフィチとソキョンとで交わされる。最初マイペースで徐々にペースアップというやり方は、かえって調子を崩すこともありうる。初っ端から行けるという感触があれば、初っ端から行った方がいい場合もある。フィチはそれで初っ端から飛ばしているのだが、予想外にもカール・カイサに抜かれてしまった。

「このままワールドレコードも抜いてしまおうか」

 得意げに言うのはカール・カイサ。ディスプレイ右上に表示されるタイムは、1分30秒779。自身の出した自己ベストからはコンマ002秒落ちだ。

 1位のヴァイオレットガールのタイムは1分30秒596。3位のフィチのタイムは1分30秒801。4位はほかの選手で、レインボー・アイリーンと龍一はまだ上がってこない。

 ふう、と大きく息を吐きだす。レインボー・アイリーンはディスプレイを見据える。

「アレクサンドラ、ショーン、見ててね」

 小声でぽそっとつぶやく。

 レインボーデザインのマシンが映し出される。

「さっきまでとは明らかに雰囲気が違いますね」

「いよいよ本気を出しに来ました」

 司会と解説がディスプレイを見て言う。ライブ配信はリアルレースと同じ視点で、そしてゴースト設定なので、ほかのマシンを通り抜けてコースを駆け抜けてゆく。

 第1コーナーはほぼアクセル全開。以後の第2コーナーからも上手く減速し体制を整え、レールに乗ったかのようなスムーズな走りを見せる。

「Yeah!」

 配信を見るアレクサンドラはショーンを抱っこしたまま右手を握り締める。感じから本気でタイムを出しに来ているのを確信したのだ。

 最終コーナーを抜け、メインストレート。唸るモーター。コースのスタートラインを超えれば、タイムが表示される。

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