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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
7/99

Battle against myself ―自分との戦い―

「お、お、おッ!」

 フィチといえば、最終コーナーで一瞬のミス、アクセル踏みすぎからオーバーステア(曲がりすぎ)を誘発してしまい。慌ててカウンターを当てて踏みとどまろうとするが、ハンドルネームのSpiralの通り渦を巻くようにスピンしてしまった。

 やむなくそのまま360度ターンをして、コース復帰をすれば。ゴーストはゴールラインに触れて消えた。

「本当にこれは僕なのかな? ……とか言うと、まるで哲学の問答みたいだ」

 少しのおかしみを覚えつつ、気を取り直してコース復帰し。アクセルを踏み込む。

 ゴーストは見えない。

 吹き飛ぶように流れゆくディスプレイの中のディオゲネスのコースに、景色。よく出来ているものだ。初めて見た時は実写と見紛うほどだった。

 韓国にいるので表示されるのは韓国語にアラビア数字。スピードの単位はキロ。

 コース前半はともかく、連続S字区間からの後半になってゴーストがちらつき出してきた。集中し、ちらつくゴーストに惑わされない。

 背を預けるシムリグのシート、グローブを嵌めた手で握るハンドル。眼前のディスプレイ。その向こうの薄いカーテン、窓、部屋に注ぎ込まれる陽光。

 自分が眼鏡をかけているこそすら忘れるほどの没頭。

 ゴーストは見えない。最終コーナーを抜け、立ち上がり加速。くうを突く鋭いモーター音が唸る。

「……!」

 あとはアクセル全開でゴールラインに突っ込むだけ、というところで。ゴーストがちらつく!

「ああ……」

 思わず呻く。

 タイムが表示された。赤い字で、1:30.982と表示された。自己ベスト更新はならず、ゴーストに勝てなかった。

 もしこれで自己ベストを更新で来たら、緑色で表示されるところだ。

「ふう……」

 没頭しすぎてか、ゴールラインを抜けてから、気も抜けて。ハンドルのボタンを押して、タイムトライアルを終えて、ディスプレイの画面を切り替えた。

 順位表が表示される。

 1位ヴァイオレットガールは1:30.007。

 2位レインボー・アイリーンは1:30.129。

 次いで3位は自分のハンドルネーム、スパイラル・Kは1:30.762。

 そして4位のドラゴンこと水原龍一は、1:30.777。

(これがカジノだったら大当たりなのになあ)

 愛嬌あるおかしみを覚える。龍一は4位を悔しがってはいるが、最後のスリーセブンを引き当てるところを見ると、彼は彼なりに持っているようだ。

 気が抜け、ひと休みしていると、甘いものが欲しくなる。シムリグから立って、離れて。部屋の机の上に置いているビスケットの詰め合わせの袋の中からストロベリービスケットを取り出し、もぐもぐと食す。

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