New changes ―新しい変化―
合間合間に、時々ポーズをして、スタッフと話し合い、勝つためのヒントを掴み取るインスピレーションを得ようとする。
みんな真剣だった。
もう試合は、本戦は始まっているのだ。
練習だからといって、手を抜けない。
大会運営スタッフたちも、パンデミックの中にあっての円滑な運営のために一生懸命だった。
時折休憩を挟みつつ、規定時間まで走り込んで。バスでホテルに戻った。
ヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンたちも、同じホテルに泊まっている。夕食は、龍一とフィチにヴァイオレットガール、レインボー・アイリーンの4人でという話になった。
もちろんチームから許可を得ている。
ホテルのレストランで4人は同じテーブルに着く。
龍一はどうにも引っ込み思案な性格だが、そのはにかみ屋なところにヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンは好印象を覚えた。
「コバンワ!」
最初声をかけたとき、ヴァイオレットガールこと、カースティは気を使って日本語で声をかけたものだった。
席に着いてからは、レインボー・アイリーンはスマホで伴侶のアレクサンドラと息子のショーンの写真を見せて、家族の話をし。
「ショーンと友達になってあげて」
などと、レインボー・アイリーンことアイリーン・エヴァンスは笑顔で言い。龍一は快諾すれば、
「Yeah アリガトー!」
と、大変喜んだものだった。
龍一はSNSを非公開にしている。ヴァイオレットガールもレインボー・アイリーンもその意思を尊重し、公開を無理強いはせずに、相互フォローの関係となった。
「ここにいるのが、夢みたいだよ」
「それはDragonが頑張ったからだよ!」
「そうよ、あなたはもっと自分を誇っていいわ」
などなど……。
「海の中は神秘にあふれているわ。その神秘の中にもぐってみたいの!」
「僕はいろんな国に行って見聞を広めたいな」
「私は家族と愛し合って、楽しく暮らしたいな」
などなど……。
ゲームに目覚めた経緯や、ゲーマー以外の、カースティの海洋学者の夢、アイリーンの家族自慢、好きな漫画やアニメ、小説、エトセトラエトセトラ……。フィチの通訳を介しながらでも、いろんな話をした。
レストランの食事も美味しく。4人ともに舌鼓を打った。
それはまさに夢のようだった。
明日からライバルとして試合をすることを、このひと時の間は忘れてしまったが。それくらいの羽目外しはいいだろう。
(ここで時間が止まってもいいな)
ふと、龍一はそんなことを考えた。




