New changes ―新しい変化―
龍一は照れくささを覚えつつ、撮られるときに意識して、みんなと一緒に笑顔を向けた。内心、あのコスプレコンビの反応を期待してしまった。
「自分がここにいるなんて、夢みたいです」
と言うと、優佳はにっこり笑って。
「これから、夢どころの話じゃなくなりますよ」
と返す。
夢どころの話じゃなくなるというのが、清濁を合わせた色々なことがあるという意味なのか、それとも素直に夢が広がるという激励の意味なのか。
「勇気を出して一歩踏み出したから、傷つくということもあります。プロの世界なので、厳しい現実もあります。でも、この世界に足を踏み込んだ以上、それを乗り越えなきゃいけないんです」
前者だった。にっこり笑顔でなかなか厳しいことを言う優佳だった。
「ウィングタイガーにしてもずっといられるわけじゃありません。成績が振るわなければ契約更新はありません。でも、所属している間は、全力でサポートさせてもらいます」
「……はい、頑張ります」
なんと返せばよいのかわからず、そう応えるのが精いっぱいだった。だがそう言ってくれるのも、龍一を信頼しているからこそだった。
それにしても、いろんな人がいる。それまで野良ぼっちで活動してきた龍一は、そのことを概念としては理解していたが、今は実感として心身に吸収していた。
(世界は、広いなあ)
あ、そうそう、忘れないうちに。と、龍一は目薬をさした。フィチも同じように目薬をさした。
やはりディスプレイを見続けるのは目に負担が大きい。目を休ませ、守るのも大事なことだ。
カフェにはヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンもチームメンバーと一緒にやってきた。互いに手を振り合い、別のテーブルに着くと、シムリグやゲームの感触を話し合う。
アリーナ内にいるときはプロに徹して余計なおしゃべりは慎んでいた。
が、合間にSNSのダイレクトメールを送ることもある。着信に気付いてフィチはスマホをチェックすれば、ヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンからだった。ホテルはここに泊まっている、ウィングタイガーはどのホテルに? との質問だったが。なんと、奇遇にも同じホテルだった。
そのことを返信すれば、あとでゆっくり会おう! もちろんDragonも! と来て、OKと返した。
カフェもそんなに広くないので、食事が終わったらすぐに出ないといけない。ウィングタイガーも素早く出て、会場に戻ろうとしたときに、入れ違いでカール・カイサとすれ違い。互いに笑顔を向けた。




