New changes ―新しい変化―
「やあ!」
フィチはソキョンの許可をとり、ヴァイオレットガールのもとにゆく。龍一も、同じくフィチに促されていっしょにゆく。
「やあ、やっと会えたね」
フィチとヴァイオレットガールは、直に合うのは初めてだった。そのフィチのうしろで、はにかみながら愛嬌を見せているアジア人男性が龍一だと、ヴァイオレットガールはすぐに気付いた。
シムリグから立ち上がり、握手代わりの肘タッチ。
「あなたがDragon、リュウイチ・ミズハラね、会えてうれしいわ」
互いの本名を教え合い。ヴァイオレットガールこと、カースティ・フリントは愛嬌のある笑顔を龍一に見せた。
異性愛者の男として、女の子に愛嬌を向けられたらやはり照れてしまうものだが。ヴァイオレットガールことカースティは、龍一のはにかむ笑顔に良い印象を覚えた。
スタッフも愛想よく、その様子を温かく見守っていた。フィチが通訳をしてくれるおかげで、話に困ることはなかった。
とはいっても、プロとして試合に臨みに来たのだ。いかに親しくても、時間を無駄にすることは許されない。
話を切り上げ、それぞれのシムリグにゆこうかと思ったとき。丁度レインボー・アイリーンがやってきた。
「Hi!」
「Hi!」
会えた嬉しさをあらわにし、肘タッチ。
「あとでね!」
まずプロとして自分の仕事をしないといけない。それぞれが自分に割り当てられたシムリグに身を預けた。
というとき、1番のシムリグにやってくる面々。
(ぎょっ!)
龍一は心臓が飛び出るかと思われるほど驚いた。
カール・カイサとそのチームスタッフだ。ゼッケンは1を割り当てられていた。ということは、龍一の隣だ。
彼とここで会うことはわかっていたが、いざ実現するとなると、緊張を禁じ得なかった。
ガキの頃からその活躍を見ていたのである。それとこういう形で会い、しかもライバルとして試合をするなど。どうして夢にも思えようか。
カールはシムリグを眺め様に、隣の龍一にも目を向ける。愛想のよい笑顔を見せる。
3番のシムリグに身を預けていたフィチだが、すぐに立ち上がる。龍一も少し遅れて立ち上がり。カール・カイサのもとまでゆき、挨拶をする。
「やあ! 君がDragonで、君がSpiral Kだね。会えてうれしいよ。本戦はいいレースをしよう!」
選手同士やスタッフ同士、ライバルでもあると同時に同じゲーマー、シムレーサー。ライバル意識とフレンドシップ、スポーツマンシップの心で肘タッチをする。
(本当に夢みたいだ)




