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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
50/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

 レース中は邪魔してはいけないとアレクサンドラは押し黙っている。しかし、幼いショーンが沈黙に耐えられるはずもなく。レース中でもお構いなく、かまってほしさに声を出してしまう。

「後で遊んであげるから、ちょっと待っててね」

 雷鳴轟く中で、優しげに答える。

「あー、いいですねえ。ほんとこんな家庭に憧れちゃいます」

 優佳は満面の笑みを見せる。ソキョンも、フィチも、そして龍一も思わず笑顔になってしまった。

(予選に通ったから余裕が持てるんだなあ)

 もし予選落ちしていたら、どんな気持ちになっていただろうか。複雑な気持ちになって、配信を見る気も起らなかったかもしれない。

 ヴァイオレットガールはリードを保っているが、レインボー・アイリーンは抜かれてしまった。

 それでも、自分の時のような、あぶなっかしい感じがしない。虎視眈々とAIカーを追走する。それどころか、コーナーごとに激しくプッシュする。なかなかのファイター気質だ。

 もちろんAIカーは妨害する。プッシュされるたびに大げさに減速して追突させようとする。が、それを巧みにかわし、隙を伺う。レースとしては、リードを保つヴァイオレットガールより追う立場のレインボー・アイリーンのの方が面白みがあった。

 しかしAIカーもさるもの、さすがのレインボー・アイリーンも簡単には抜けず。そのまま周回を重ねることになった。

 20週を越え、25週に入り、30週目に突入した。

 レース状況は変わらず。

 フィチはビスケットをほおばり、龍一は缶コーヒーをすすりながらディスプレイを見据えていた。

「おっ!」

 ビスケットを口にしながら思わず声が出る。優佳もソキョンも龍一も、思わず「あっ」と声が出る。

 メインストレートでAIカーがヴァイオレットガールのマシンに並んだ。コーナーでイン側だ。

 だがヴァイオレットガールは道を譲らず、並走したまま第1コーナーに突入し、並んでコーナーを駆け抜ける。しかし次のコーナーではアウト側だ。

 AIカーは膨らんでこない。珍しく妨害をせずにそのまま抜くつもりだ。しかしヴァイオレットガールはタイヤをスライドさせながら、AIカーと並んだ状態で右の第2コーナーを駆け抜けようとする。

「マジかよ」

 龍一は唸る。

 矢印デルタマークがディスプレイの右側を指し示す。2台は並んだまま。

「AIカーと並んで走れるなんて……」

「すごすぎます……」

 ソキョンと優佳はヴァイオレットガールの大胆にして、かつ繊細なマシン操作に度肝を抜かれる思いだった。

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