Go over 100%! ―100%を超えろ!―
にわかに眠気に襲われる。が、そのまま眠たくなるに任せた。
(あ、ヴァイオレットガールにレインボー・アイリーン!)
予選レースのライブ配信を告知していた。その時間に合わせていそいそとスマホのアラームをセットして。
「……」
眠たくなるに任せて、そのまま床で寝た。
窓からは陽光が注ぎ、気候も穏やか。フィチの言う通り、レース中の激しい雷雨も、終わってみれば春の雨。
すやすやと、心から昼寝を堪能したのだった。
フィチは帰宅して、両親に予選通過を伝えれば、
「よかった、よかった」
と、我が事のように喜んでくれた。
「はい、これ」
と、母親が差し出すのは、ビスケットの詰め合わせだった。フィチのために買い求めたのだった。
「……母さん、ありがとう」
母親は足が不自由で、しかもコロナ禍、買い物には行けないので。通販で買い求めたのだった。
「車の運転もあんまりしないし、車への興味も薄いお前がレースゲームのプロになるなんてなあ。人生何があるかわからんなあ」
と、父親は言うのだった。
フィチは免許は持ってはいるが、自分の車はない。使うときは父親が所有しているものを使う。しかしその頻度は低い。むしろ自転車が本命の愛機だった。
「そうだね、人生何があるかわからないね」
フィチは両親の喜ぶさまに接して、本戦レースへの気持ちが高まるのだった。
しかし、疲れもある。家に帰りつけば、緊張感が抜けたせいかどっと疲労感に襲われて。
自分の部屋に戻って、服もそのままにベッドに倒れこんでそのまま寝てしまった。
時は経つ。
スマホのアラームが鳴った。
龍一は床に寝そべったまま寝てしまっていて、がばっと起き上がってアラームを止めて。
シムリグに身を預け、ディスプレイをつけ、ブラウザを分割して動画投稿サイトにアクセスし。ヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンのチャンネルを閲覧した。
サイドテーブルのノートパソコンを起動させれば、ビデオチャットをオンラインにする。
ソキョンと優佳に、フィチもすでにビデオチャットに繋いで。ヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンのチャンネルを閲覧していた。
「どんなレースをするのか、お手並み拝見といきましょうか」
ソキョンは笑顔で言う。こちらはすでに予選を通過しているので、高みの見物気分である。
まだ待機画面だったが。まずレインボー・アイリーンのライブ配信が始まった。
写っているのは、シムリグに身を預ける勇姿、ではなく。そのシムリグの前で我が子を抱くレインボー・アイリーンと、伴侶のアレクサンドラ・ルオ(羅)だった。




