Go over 100%! ―100%を超えろ!―
このままフィニッシュ目指して走るのみ。しかし油断しない。AIカーのミスに安堵するあまり自分がミスしては元も子もない。
龍一の方では、ミスをしてくれる気配はない。最終コーナーを抜け、残りは5週を切る。
(やっぱり難しいもんだな!)
張り付きゃどうにかなるだろうと思っていたが、やっぱりそんなに甘くはなかった。
ディスプレイが激しく明滅する。落雷だ。激しい雷鳴も轟き、雨音もモーター音も掻き消される。
(どうしますか龍一さん?)
優佳は見ながらハラハラドキドキが強まる。龍一は膠着状態で動きがなさそうな感じで、このまま終わるのかと心配する。
(腹を決めて、仕掛けるか!)
高速の右の第1コーナーでは張り付き。次の第2コーナーに備えインをうかがう。しかししっかりラインを閉められる。
(あ、そうだ!)
咄嗟に龍一はアウトに膨らんだ。だから、第2コーナーでは膨らむようなラインでクリアすることになる。次は連続S字区間。まず右。AIカーはインを閉めながら減速する。龍一はアウト側に並んで。
並んだ状態で緩やかな右コーナーをクリアする。しかしインが強く、AIカーを抜けないまま、次の左に入る。
AIカーはそこでもインを閉め、龍一はアウト側に並ぼうとする。
「!!」
動きを察知したAIは素早く接触してこようとし、迫ってきて。龍一はとっさに減速してこれをかわした。
結局順位は変わらないままに連続S字区間をクリア。次の右直角では無理に仕掛けず。
(フェイクも簡単には出来ないな)
しかし仕掛け続ける。
ノートパソコンを見据えるソキョンたちチームのスタッフも強い緊張感を覚える。
(プロとしての第一歩で、よく頑張っている方ね)
予選に通らなくても内容次第では更新でいいと思ったが。龍一が予選を通る条件のままにしてくれと言い、その意気に感じてその通りにした。
しかし、万一のことを思えば、やはり惜しい気持ちは禁じ得ない。
最終コーナー、龍一はインをうかがう。しかしやはりAIカーはインを閉める。龍一も無理に迫らない。
最終コーナーを抜け、メインストレートに入る。雨音交じりにモーター音が高鳴る。
高速右第1が迫る。AIカーはインを空ける。
(誘っているのか? ようし、誘われてやろうじゃないか!)
思い切ってインに飛び込む。案の定、並んだ途端にAIカーが迫ってくる。しかし龍一はひるまない。
接触した。ソキョンや優佳たちは息をのんだ。そこから吹っ飛ぶイメージが刹那的に沸いた。
しかし、接触したのはタイヤ同士だった。




