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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
39/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

―ライブ配信なしにしてよかったわ―

―そうですね。余計に上がっちゃうでしょうし―

 普段ならチームのウェブサイトやSNSでも参加大会やライブ配信の告知はしているのだが、この予選は、事情によりライブ配信がありません、ご理解ごおよび了承くださいと書かざるを得なかった。

 本来なら費用を出して龍一を拠点に招いてしたかったのだが、コロナ禍でそうもいかず。リモートでの単独でプレーせざるを得ず。龍一に余計な負担をかけさせないためにライブ配信はなしにせざるを得なかった。

 それはともかく、レースだ。ライブ配信はないものの、特設サイトでのレースということで、記録は確かに残る。

 AIカーは水しぶきを跳ね上げながらディオゲネスの市街地コースを突っ走る。高速コーナーの第1コーナーでも、ふらつくことなく安定した走りを見せてクリアする。

 第2コーナーでもかなりギリギリのブレーキングなのだが、これもふらつくこともなく、以後のコーナーもまるでレールの上を走るような、オン・ザ・レールの安定した走りを、水しぶきを後ろに掛けながら走る。

 龍一は内心で、

(焦るなよ)

 と自分に言い聞かせながら、AIカーを追う。

 フィチは追走ながら安定した走りを見せ、淡々と周回をこなす。

(追突させようとしないな)

 この特設サイトのAIカーは、予選にそなえてプログラムを変えたのか。普段なら追突させるために必要以上に減速する。その一方で、それが抜くチャンスでもあったのだが。

 鋭いモーター音が高鳴る。それをかき消す雷鳴、水の音。宗教画に描かれるような。神の怒りを思わせる。

(バベルの塔は崩れた)

 ふと、そんなことを、フィチは思った。その途端、メインストレートに入った時だった、雷光が激しく明滅し、落雷が議事堂を直撃し。さらに雷光の明滅。くうを揺るがす大きな雷鳴が耳を突き、身も心も揺さぶる。

(落雷!?)

 初めて見た。どんなに雷光や雷鳴がひどくても、落雷はなかったのに。特設サイトは特別に落雷まで入れているのか。

 ソキョンらウィングタイガーの面々と優佳もさすがに驚いた表情を見せ、あんぐりと口を開けてしまい。それに気付き、慌てて顔を引き締める。

 これがリアルレースなら、さすがにレッドフラッグが振られ、レースは中断だが。そこはシムレーシング。ヴァーチャルな世界ならいくら落雷があっても実害がないので、そのままレース続行だ。

 リアルでは不可能な状況をヴァーチャルで楽しむのも、それはそれでゲームの醍醐味ではあるが。さすがにこれには心から驚かされた。

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