Go over 100%! ―100%を超えろ!―
龍一とフィチは黙りこくってしまった。ソキョンと優佳も何も言わない。ふたりの自主性を重んじ、かつ信じて、様子を見守る。
「時間もないし、無理に苦手を克服するより、得意なところを伸ばす方がいいんじゃないかな」
龍一が重い口を開く。それを聞いて、
「そう、それ、それ、それで行こう!」
とフィチも同意する。どうやらどうにか着地点を見つけられたようで、ソキョンと優佳はほっとする。ほっとしつつも、
「得意なところを伸ばすとは、どういうことですか?」
と、敢えて突っ込んでみた。
「え?」
龍一は思わずきょとんとしてしまった。
「こういうことは曖昧にしてはいけません、そうですね、コースで一番得意な区間はどこですか?」
「え、そうですね、第1コーナーです」
「一番苦手なところは?」
「連続S字から次の右コーナーです。一番難しい区間でついつい無理をしてしまって」
「それなら、そこでは少々遅くても絶対にミスをしないことを心掛けて、第1ではさらに磨きをかけられるよう努力してください」
(さすがソキョンさんだなあ)
ゲームプレーはついつい感性に頼りがちになってしまうが、感性だけで勝てるほど甘くないのがプロの試合だ。理論を構築し、試合運びのプランを立てられるようになってこそ、プロと言える。
「苦手なところは少々遅くてもノーミスを心掛ける、ですか」
「そうです。難しく考えたらかえってドツボです」
「わかりました」
長所を伸ばす話だったのが、短所の穴埋めの話にもなった。フィチは改めてソキョンに尊敬の念を抱いて。なんとかウィングタイガーに入りたいと思った。
「そうそう、龍一さん、お願いしていたプロフィール写真、確かに受け取りましたよ」
優佳が言う。
「あ、お願いします」
「ちゃんと写真屋さんで撮ってきてくれたおかげで、イケメンに写ってますよ」
「ありがとうございます……」
優佳の笑顔に、龍一はついつい照れ照れになってしまう。
ウィングタイガーももちろんウェブサイトがあり、そこでの選手紹介に載せる写真を撮って、そのデータ化したものをメールで送った。
もっとも、紹介欄に載るのは予選に通ってからだが。通ってからでは作業に遅れが生じる。そのため、賭けになるが先に写真を撮ったのだった。
「それでは、今日はこれまで。予選は明後日です。夜更かしせず、コンディション調整もお願います」
「わかりました。それでは」
こうして金曜日は終わり、花金だと浮かれずにすぐ寝て。土曜日を迎えて。
土曜日は休みをもらい。練習と打ち合わせに時間を費やし。
ついに迎えた日曜日、予選の日。




