Go over 100%! ―100%を超えろ!―
時間が来た。スマホのアプリを閉じ。ヘッドギアを差し替えて、ビデオチャットは再開された。今度はソキョン、フィチ、龍一、優佳の四人で画面を四分割してのビデオチャットだった。
ほかの男性スタッフは別件の仕事に取り掛かっているという。
ソキョンは率直に龍一の走りを評価する。
「一発の速さより粘り強いレース運びをするタイプですね。勝てないまでも下位に沈まず、着実にポイントを積み重ねるとでも言いましょうか」
(そうかな?)
龍一は自分がどんなタイプだとか考えたことはなく、目先のプレーをこなしていただけだったから。初めて人にじっくり見てもらって評価してもらって、なんだかこそばゆいものだった。
「予選に通らなくてもレースの内容次第では本加入をしてもいいのではないかと、スタッフと話し合いました」
「え?」
もしかしたら条件が緩くなる? そんな淡い期待もあった。
「ですが、フィチの方から当初の条件で通してほしいと要望がありました。龍一さんを信じているからと」
「え……?」
思わず龍一は絶句し。それからやや苦笑。
「フィチ~、君は厳しいなあ」
「厳愛と言ってくれ」
「厳愛って、韓ドラの歴史ドラマかよ~」
「王様! 王道とは茨の道でございます!」
フィチはいたずらっぽく、日本語吹き替えの真似をしておどける。優佳はたまらず口を押さえて吹き出す。
ソキョンはなにやってんだと苦笑しつつ、話を継ぐ。
「ですが、さきほどの粘り強い走りを見て、龍一さんを手放すのは惜しいというのが本音です。シムレーシングには耐久レースもありますし」
「まあそうですね。予選に通らなくても内容次第では本加入もありえる、ということです」
優佳が結論を言う。聞いて龍一は安堵する、ということはなく、かえって緊張感が高まる。ここまで必要とされていたなんてと思うと、緩くなったからといって手を抜けない。
なんとしても予選を通らなかったら、この人たちに悪いという使命感を禁じ得ないのだった。
「厳しい条件はフィチも同じでした。龍一さんに厳しい条件を課すなら、僕にもと言ってまして」
「ああ、それは言わなくてもよかったなあ」
「フィチ……」
韓ドラに出てきそうな熱血漢なところもあるんだと驚かされる。が、意を決した。
「お気遣いありがとうございます。ですが、厳しい条件のままでいいです。予選、絶対通ります!」
「龍一さん……」
ソキョンと優佳は絶句する。
「どうせ通らなきゃいけないものですし、というか、オレ自身、絶対通ると思ってやってます。お願いします。厳しい条件のままでいてください」




