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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
31/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

 右斜め後ろからディスプレイが主に見えるようにカメラを置いているので、フィチの表情はわからないが。その右手の動きの巧みさには感心させられる。

「……」

 メインストレート。なんとフィチは左に寄って減速し、AIカーを先に行かせたのだった。龍一はこれには驚き、思わず、

「なんで!?」

 と、声を上げてしまった。

「追い上げがすごいから、負担軽減のために道を譲ったみたいですね」

 と優佳が解説する。それを聞いて、なるほどと思うと同時に、優佳はレースにも詳しいことを知った。実際のリアルレースでも無理をせず相手に道を譲ることはある。追うより追われることの負担は想像以上に大きく。不確実な1位より確実な2位というレース運びも状況によって求められる。

 が、1対1で勝利が絶対条件のレースではこれはできない。

 この場合は純粋に負担軽減のためだった。

「そうか、道を譲るか。長丁場なら」

 本当にプロのレース運びだと、龍一は感心した。フィチの青いマシンはAIカーに張り付く。無理はせず、相手の様子を見る。と言いたいが。

「甘かったですね」

 と、ぽそっとつぶやき。ソキョンも苦笑してうなずく。

 雨のレースだ。水しぶきが視界を遮り。車間距離を開けざるを得ない。人間ならではだ。AIはプログラム操作なので視界の心配なく、ぴったり張り付いてたというのに。

(この状況で一発勝負で勝てなんて、やっぱり難しいよな)

 もしかしたら自分もフィチもダメで全滅という結果もありうる。厳しい勝負の世界とは言え。

「……」

 ふと、ソキョンたちの目つきが真剣そのものだということに、今気付いて、自分が恥ずかしくなる。

 水しぶきで視界が悪いとはいえ、フィチはよくAIカーに着けている。一定の距離を保って、引き離されることはない。

 時折追突させようと大げさな減速をすることもあるが、それにも上手く対処する。

(ヴァイオレットガールやレインボー・アイリーンは、どうするんだろう)

 缶コーヒーを口につけ、フィチの走りを眺めながら、レコード上位ふたりに思いを馳せた。

 ヴァイオレットガールもレインボーアイリーンも大会出場を表明し、予選レースではライブ配信もすると予告していた。

 ちなみにウィングタイガーは、ライブ配信はしない。フィチはともかく、プロとしては新人の龍一が気を逸らすことなく、レースに専念してほしいからということだった。

 ライブ配信はプロゲーマーにとっても活動の一環でもあり、広報や宣伝のの一環でもある。それをしないというのは、よほどのことだ。

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