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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
29/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

(読書の力って、すごいわねえ)

 ソキョンはフィチの来歴に思いを馳せる。子供のころはゲームに興味はなく、もっぱら読書が好きで本を読み漁っていたそうだ。

 その範囲は朝鮮の英雄ホン・ギルドン(洪吉童)を題材にしたものや武侠小説、古今東西の名著や流行りのラノベやSFにまで及んだ。

「生きるべきか死ぬべきか」

「黙れ下種!」

 などと、物語の登場人物になり切った遊びもしていたそうだ。

 15のころ、友達がレースゲームをしてて、一緒に遊んだ。それを重ねるうちに、なぜか、開眼するものがあって、レースゲームをやりこむようになって。今に至る。

 本から学んだことはたくさんあるそうだが。

「人生何があるかわかりませんねえ」

 などと、まだ二十代前半なのに、そんな大人びたことを言うものだった。その一方で、闘争心が湧くと、ホン・ギルドンをはじめとした、本で親しんだ英雄豪傑が胸中に浮かび上がり、勇気が湧くのだという。

 ソキョンは目の前に垂れた前髪を指でどかしながら、フィチの心の中のホン・ギルドンに思いを馳せた。

 ともあれ、リスタートをしたフィチはAIカーを追走する。

「おっ」

 連続S字区間の出口、インを開けた。咄嗟に飛び込み、そのまま抜き去った。抜き去るまでAIカーは何かを仕掛けたようだが、フィチはそのまま抜き去った。

 ヒュー。と、男性スタッフのひとりが口笛を吹いた。

(AIカーはクラッシュに巻き込むために、わざと隙を見せるときがあるけれど。それは抜くチャンスでもあるのよね)

 フィチは上手く機会を生かした。このテクニックや機転あればこそ、チームに招き、プロとして活動出来ているのだ。

 だが引き離せない。AIカーは猛然とフィチに迫る。スタミナを考慮しなくてもいいから、もう初っ端からイケイケだ。

 その間に、龍一の方ではフィニッシュする。

 2位。と言っても、1対1の勝負なので、負けだ。それも2周遅れ。

 ただ優佳とソキョンたちはその様子を笑顔で眺めていた。

「途中で投げ出さずに完走したのは、とても大事なことですよ」

 優佳は笑顔で言い。ソキョンたちも笑顔でうなずき。龍一は照れる仕草を見せて。

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 と、答えた。

 とはいえ、大雨の設定で100%ベリーハードのAIカーを相手にレースをするのは疲れる。龍一は休憩してよいか尋ね、ソキョンはこれを許可した。

「フィチはスタミナあるんだな」

「フィチ選手はトレーニングもしてますからね。プロだからフィジカルも大事になるんですよ」

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