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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
28/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

 優佳は満面の笑みを浮かべ、それを韓国語に訳せば。ソキョンたちもそうですと笑顔で頷く。

 ピットアウトしたとき、AIカーは連続S字区間にいて距離が空いていたから、貸し切り状態で淡々と周回をこなすかたちになった。

 フィチといえば、じっくりAIカーを追う一方で無理はしない。急ブレーキをで追突させようとする素振りは見せるが、それは承知のことなので上手く対応し、車間距離を保ち。機会をうかがう。

 ソキョンたちも余計なことは言わず、じっとレースの成り行きを見守る。

(しかし、雨はやっぱり難しいもんだ)

 距離が空いて単独状態とはいえ、難しいコンディションだ。視界も悪い、路面も滑りやすい。コントロールも難しい。慎重さが求められる。

(結局これも自分との戦いなんだなあ)

 あっ、と思った。

 マシンは連続S字区間の最後の右コーナーでの立ち上がり。リアが流れる、オーバーステアだ。咄嗟にカウンターを当て、大振りドリフト状態で右コーナーを抜けざるを得なかった。しかし次の右直角コーナーまでの区間で体勢を整えられず、やむなくブレーキを踏みこんで止まりそうなほど減速せざるを得なかった。

「う!」

 どん、と後ろからぶつけられる衝撃。おたおたする間に差を詰められ、しかもわざわざぶつけられた。

(なんて野郎だ!)

 それからAIカーは真っ白な車体を見せつけ、走り去ってゆく。

(ちきしょう。今に見てろよ)

 今はじっとこらえて。今に見ろ。と、AIカーに念を向けながらレースを続行する。

「ああ」

 フィチが思わず声を上げた。最終コーナーの入り口で、追突させられてしまったのだ。

 2台のマシンは吹っ飛び、フェンスに激突し。タイヤが明後日の方向を向くほどの大破。

 FATAL DAMAGE!

 と、赤い字が表示される。

「すみません……」

 フィチはため息をつき、ハンドルのボタンを押してやむなくポーズをする。

「やっぱり100%ベリーハードは難しいわね……」

 ソキョンもため息をつく。

 ミスをしない走りに加えて、あからさまでえげつなく、かつ巧妙な妨害。よくそんな風にしたものだ。

 と、男性スタッフが漏らしたが。

「でも、その方が闘志が湧きます」

 フィチは笑顔で答えた。不思議なもので、ムカつきはするものの、闘志が湧き。勝った時の嬉しさは一段と高い。

「休憩する?」

「いえ、リスタートします」

「そう、頑張ってね」

 パッと見普通の男の子のようなフィチだが、その心根はファイターだった。クラッシュに巻き込まれて、闘志がさらに燃え上がったようだ。

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